海外文学読書録

書評と感想

2022-01-01から1年間の記事一覧

マルキ・ド・サド『恋のかけひき』

恋のかけひき (角川文庫) 作者:マルキ・ド・サド,澁澤 龍彦 KADOKAWA Amazon ★★★★ 日本オリジナル編集の短編集。「ファクスランジュ あるいは 野心の扉」、「ロドリグ あるいは 呪縛の塔」、「オーギュスティヌ・ドヴィルブランシュ あるいは 恋のかけひき」…

マルキ・ド・サド『閨房哲学』(1795)

閨房哲学 (角川文庫) 作者:マルキ・ド・サド,澁澤 龍彦 KADOKAWA Amazon ★★★ 15歳の少女ウージェニイが、性的逸脱者のサン・タンジュ夫人とドルマンセから教育を受ける。2人は近親相姦や不倫など、無神論に基づいた悪徳の論説を展開し、最終的にはウージェニ…

2022年に読んだ469冊から星5の15冊を紹介

このブログでは原則的に海外文学しか扱ってないが、実は日本文学やノンフィクションも陰でそこそこ読んでおり、それらを読書メーターに登録している。 今回、2022年に読んだすべての本から、最高点(星5)を付けた本をピックアップすることにした。読書の参…

京極義昭『映画 ゆるキャン△』(2022/日)

映画『ゆるキャン△』 東山奈央 Amazon ★★★ 名古屋の小さな出版社で働くリン(東山奈央)。山梨の観光機構にUターン就職した千明(原紗友里)。東京のアウトドアショップに勤めるなでしこ(花守ゆみり)。山梨で小学校教師をしているあおい(豊崎愛生)。横浜…

小津安二郎『東京物語』(1953/日)

東京物語 笠智衆 Amazon ★★★★ 周吉(笠智衆)ととみ(東山千栄子)の老夫婦が尾道から上京してくる。町医者で長男の幸一(山村聡)、さらに美容院を経営する長女の志げ(杉村春子)の家を訪れるも、どちらも忙しくて十分もてなすことができない。そんななか…

マルキ・ド・サド『美徳の不幸』(1787)

美徳の不幸 (角川文庫) 作者:マルキ・ド・サド,澁澤 龍彦 KADOKAWA Amazon ★★★ 12歳のジュスティーヌは3歳上の姉ジュリエットと修道院で暮らしていたが、両親の破産によって修道院から出ることになる。姉妹は離ればなれに。美徳を奉じるジュスティーヌは行く…

フランツ・カフカ『ある流刑地の話』

ある流刑地の話 (角川文庫) 作者:フランツ・カフカ,本野亨一 KADOKAWA Amazon ★★★ 日本オリジナル編集の短編集。「二つの対話」、「観察」、「判決」、「村の医者」、「ある流刑地の話」、「断食芸人」、「ある犬の研究」の7編。 旅行者は考えこんでしまった…

岩井澤健治『音楽』(2020/日)

音楽 坂本慎太郎 Amazon ★★★★ 高校生の研二(坂本慎太郎)は、同じ学校の太田(前野朋哉)や朝倉(芹澤興人)とつるんで不良をしていた。3人の友人に亜矢(駒井蓮)がいる。研二・太田・朝倉の3人はひょんなことからバンドを組むことに。ところが、編成はベ…

ギョーム・アポリネール『若きドン・ジュアンの冒険』(1911)

若きドン・ジュアンの冒険 (角川文庫) 作者:ギョーム・アポリネール,須賀 慣 KADOKAWA Amazon ★★★ 夏。13歳のロジェが母親や2人の姉と共に田舎の地所にやってくる。彼らの住居は「お城」と呼ばれていた。ロジェは浴室で女中たちに体を洗ってもらっていたが、…

フランツ・カフカ『城』(1926)

城 (角川文庫) 作者:フランツ・カフカ,原田 義人 KADOKAWA Amazon ★★★★ 晩遅く、測量技師のKが雪深い村に到着する。その村は城の領地で、伯爵の許可なしに住んだり泊まったりすることはできなかった。Kは2人の助手を押し付けられ、酒場の女中といい仲になる…

フランツ・カフカ『審判』(1925)

審判 (角川文庫) 作者:フランツ・カフカ,本野 亨一 KADOKAWA Amazon ★★★ 30歳の誕生日に銀行の業務主任ヨーゼフ・Kが見知らぬ2人組の訪問を受け、自分が逮捕されたことを告げられる。しかし、罪状は分からない。ヨーゼフ・Kは今まで通り日常を過ごしていいこ…

マルキ・ド・サド『悪徳の栄え』(1797-1801)

悪徳の栄え (角川文庫) 作者:マルキ・ド・サド KADOKAWA Amazon ★★ パンデモンの修道院で育てられたジュリエットは、13歳のとき、三十路の尼僧デルベーヌ夫人と出会う。ジュリエットはデルベーヌ夫人からキリスト教道徳に反した悪徳を教育されるのだった。修…

フランツ・カフカ『アメリカ』(1927)

アメリカ (角川文庫) 作者:フランツ・カフカ,中井 正文 KADOKAWA Amazon ★★★★ 16歳でドイツからアメリカに追放されたカール・ロスマンは、ニューヨーク港で火夫の抗議に協力した後、伯父で上院議員のヤーコブに引き取られる。ヤーコブは仲介業を営む富裕層だ…

ヨナス・ヨナソン『華麗な復讐株式会社』(2020)

華麗な復讐株式会社 作者:ヨナス・ヨナソン 西村書店 Amazon ★★★ ストックホルム。画商ヴィクトル・アルデルヘイムは極右の野心家である。彼は金持ちの令嬢イェンニから財産を奪い、私生児の息子ケヴィンをケニアのサバンナに置き去りにした。ケヴィンは現地…

ジョン・ケネディ・トゥール『愚か者同盟』(1980)

愚か者同盟 作者:ジョン・ケネディ・トゥール 国書刊行会 Amazon ★★★ ニューオリンズ。30歳のイグネイシャスは肥満体の子供部屋おじさんで、どこにも発表するあてのない論文を子供用レポート用紙に書き殴っていた。そんな彼も母親の不始末で外に働きに出るこ…

ロマン・ポランスキー『水の中のナイフ』(1962/ポーランド)

水の中のナイフ(字幕版) レオン・ニェムチック Amazon ★★★★ アンジェイ(レオン・ニェムチック)とクリスティーナ(ヨランタ・ウメッカ)は裕福な夫婦。アンジェイが車を運転していると、前方に若者(ジグムント・マラノウッツ)が飛び出してきた。若者はヒ…

本宮ひろ志『夢幻の如く』(1991-1995)

夢幻の如く 第1巻 作者:本宮 ひろ志 サード・ライン Amazon ★★★ 1582年(天正10年)。本能寺の変で絶体絶命に陥った織田信長だったが、謎の光に助けられ命拾いする。信長は身分を隠して暗躍し、豊臣秀吉に天下を取らせるのだった。その後、海を渡って世界征…

本宮ひろ志『赤龍王』(1986-1987)

赤龍王 第1巻 作者:本宮 ひろ志 サード・ライン Amazon ★★★ 紀元前221年。秦の始皇帝が中国を統一する。ところが、独裁者となった始皇帝は圧政を敷くのだった。民衆はそれに不満を持ち各地で蜂起する。沛県の亭長・劉邦は粗野な農民だったが、肝っ玉と人望で…

本宮ひろ志『天地を喰らう』(1983-1984)

天地を喰らう 第1巻 作者:本宮 ひろ志 サード・ライン Amazon ★★★ 後漢末期。天界を率いる竜王には2人の娘がおり、彼女たちは若返るために男の初精を必要としていた。劉備と諸葛亮が姉妹と交わる。やがて劉備は鬼を退治することで「肝っ玉」を手に入れ、関羽…

ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q―自撮りする女たち―』(2016)

特捜部Q―自撮りする女たち― (ハヤカワ・ミステリ) 作者:ユッシ エーズラ オールスン 早川書房 Amazon ★★★ コペンハーゲン警察。特捜部Qのカール・マーク警部補のところに元殺人捜査課課長のマークス・ヤコプスンがやってくる。マークスは三週間前に起きたリ…

カレル・チャペック『白い病』(1937)

白い病 (岩波文庫) 作者:カレル チャペック 岩波書店 Amazon ★★★★ ヨーロッパで〈白い病〉が流行した。この病気は中国発祥で、患者は体に白い斑点が出て生きながら腐敗していく。罹患するのは50歳前後。若い世代への感染はなかった。ある日、枢密顧問官ジー…

出崎統『あしたのジョー』(1970-1971)、出崎統『あしたのジョー2』(1980-1981)

第1話「あれが野獣の眼だ!」 あおい輝彦 Amazon ★★★★ 山谷のドヤ街に矢吹丈(あおい輝彦)という少年が現れる。矢吹は喧嘩が滅法強かった。元ボクサーの丹下段平(藤岡重慶)はその素質に惚れ込み、彼にボクシングをさせようとする。しかし、矢吹は令嬢・白…

大城立裕『カクテル・パーティー』(1967)

カクテル・パーティー (岩波現代文庫) 作者:大城 立裕 岩波書店 Amazon ★★★★ 短編集。「亀甲墓 実験方言をもつある風土記」、「棒兵隊」、「ニライカナイの街」、「カクテル・パーティー」、「戯曲 カクテル・パーティー」の5編。 「あそこに」孫氏が遠くを…

ジョルジュ・シムノン『証人たち』(1955)

証人たち―シムノン本格小説選 作者:ジョルジュ シムノン 河出書房新社 Amazon ★★★ 重罪裁判所で裁判長を務めるグザヴィエ・ローモンには病気で寝たきりの妻ローランスがいた。ローモンは何かとローランスに気を使ってあれこれ世話を焼いている。また、ローモ…

エリザベス・ストラウト『バージェス家の出来事』(2013)

バージェス家の出来事 作者:エリザベス ストラウト 早川書房 Amazon ★★★ ニューヨークで暮らすジムとボブはメイン州出身の兄弟。ジムは有名な弁護士で、ボブは訴訟支援に勤務している。メイン州ではボブと双子のスーザンが息子のザカリーと暮らしていた。あ…

『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021)

大豆田とわ子と三人の元夫 Blu-ray BOX 松たか子 Amazon ★★ 建設会社の社長・大豆田とわ子(松たか子)には3度の離婚歴があった。1人目の元夫はレストランのオーナー・田中八作(松田龍平)。2人目の元夫はファッションカメラマン・佐藤鹿太郎(角田晃広)。…

『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011-2019)

ゲーム・オブ・スローンズ(第一章~最終章)4K ULTRA HD コンプリート・シリーズ(30枚組+ブルーレイ ボーナス・ディスク3枚付)[4K ULTRA HD + Blu-ray] ピーター・ディンクレイジ Amazon ★★★★★ 北部を領地とするエダード・スターク(ショーン・ビーン)は、七…

エドゥアルド・ハルフォン『ポーランドのボクサー』(2008,2010,2014)

ポーランドのボクサー (エクス・リブリス) 作者:エドゥアルド・ハルフォン 白水社 Amazon ★★★★ 日本オリジナル編集の短編集。「彼方の」、「トウェインしながら」、「エピストロフィー」、「テルアビブは竈のような暑さだった」、「白い煙」、「ポーランドの…

アンリ・シャリエール『パピヨン』(1969)

パピヨン 上 (河出文庫) 作者:H・シャリエール 河出書房新社 Amazon ★★★ 1931年。25歳のやくざ者パピヨンが無実の罪で終身刑を言い渡される。彼は仏領ギアナの流刑地に送られることになった。1933年。パピヨンは仲間と共に脱走する。一行はトリニダッドを経…

小津安二郎『麦秋』(1951/日)

麦秋 原節子 Amazon ★★★★ 鎌倉。間宮家の長女・紀子(原節子)は東京でOLをしている28歳の独身女性。彼女は実家暮らしをしていた。実家には、父・周吉(菅井一郎)、母・志げ(東山千栄子)、長男・康一(笠智衆)、その妻・史子(三宅邦子)、そして長男夫…