海外文学読書録

書評と感想

日本文学

丸谷才一『笹まくら』(1966)

笹まくら (講談社文庫) 作者:丸谷才一 講談社 Amazon ★★★★★ 私立大学の事務員・浜田庄吉は45歳の既婚者。彼の元に昔の恋人・阿貴子の訃報が届く。戦時中、浜田は徴兵忌避者として日本全国を逃げ回っており、その際、阿貴子と出会って恋仲になっていた。一方…

大江健三郎『死者の奢り・飼育』(1959)

死者の奢り・飼育(新潮文庫) 作者:大江 健三郎 新潮社 Amazon ★★★★ 短編集。「死者の奢り」、「他人の足」、「飼育」、「人間の羊」、「不意の唖」、「戦いの今日」の6編。 それから急に僕らは、黒人兵が堂々として英雄的で壮大な信じられないほど美しいセ…

大城立裕『カクテル・パーティー』(1967)

カクテル・パーティー (岩波現代文庫) 作者:大城 立裕 岩波書店 Amazon ★★★★ 短編集。「亀甲墓 実験方言をもつある風土記」、「棒兵隊」、「ニライカナイの街」、「カクテル・パーティー」、「戯曲 カクテル・パーティー」の5編。 「あそこに」孫氏が遠くを…

村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』(2020)

丸の内魔法少女ミラクリーナ 作者:村田 沙耶香 KADOKAWA Amazon ★★★★ 短編集。「丸の内魔法少女ミラクリーナ」、「秘密の花園」、「無性教室」、「変容」の4編。 結局、正義なんてどこにもないんだ、というのがミラクリーナの出した結論だった。大人になると…

村田沙耶香『生命式』(2019)

生命式 作者:村田沙耶香 河出書房新社 Amazon ★★★ 短編集。「生命式」、「素敵な素材」、「素晴らしい食卓」、「夏の夜の口付け」、「二人家族」、「大きな星の時間」、「ポチ」、「魔法のからだ」、「かぜのこいびと」、「パズル」、「街を食べる」、「孵化…

村上春樹『騎士団長殺し』(2017)

騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編(上)―(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon ★★★ 画家の「私」は、6年連れ添った妻から突然別れを切り出される。「私」はそれを了承して家から出ていき、友人の伝手で高名な日本画家が住んでいた山荘を借りる。ひょ…

大西巨人『神聖喜劇』(1978-1980)

神聖喜劇〈第1巻〉 (光文社文庫) 作者:大西 巨人 光文社 Amazon ★★★★★ 1942年。新聞記者の東堂太郎が補充兵として対馬に招集される。彼は超人的な記憶力と持ち前の論理によって、軍隊内の様々な不条理に抵抗する。東堂は学生時代に社会主義活動の疑いをかけ…

『平家物語』(1240?)

平家物語 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 全30巻) 作者:古川日出男(翻訳) 河出書房新社 Amazon ★★★★★ 治承元年(1177年)。平清盛は権力を笠に着て横暴な振る舞いをしていた。朝廷では平氏が高位の官職を占めており、「平家にあらずんば人にあらず」という…