海外文学読書録

書評と感想

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

リュドミラ・ウリツカヤ『女が嘘をつくとき』(2008)

女が嘘をつくとき (新潮クレスト・ブックス) 作者:リュドミラ ウリツカヤ 新潮社 Amazon ★★★ 連作短編集。「ディアナ」、「ユーラ兄さん」、「筋書きの終わり」、「自然現象」、「幸せなケース」、「生きる術」の6編。 女のたわいない嘘と男の大がかりな虚言…

レアード・ハント『優しい鬼』(2012)

優しい鬼 作者:レアード・ハント 発売日: 2015/10/07 メディア: 単行本 ★★★★ インディアナ州に住む14歳のジニーが、親戚のライナス・ランカスターの口車に乗って彼と結婚、ケンタッキー州シャーロット郡にある「楽園」に移住する。ライナスは独裁的な人物で…

ジョイス・キャロル・オーツ『ジャック・オブ・スペード』(2015)

ジャック・オブ・スペード 作者:ジョイス・キャロル・オーツ 河出書房新社 Amazon ★★★ 売れっ子ミステリ作家のアンドリュー・J・ラッシュは、ジャック・オブ・スペードという別の名義を使ってノワール小説を発表していた。ジャック・オブ・スペードは覆面作…

エドウィージ・ダンティカ『骨狩りのとき』(1998)

骨狩りのとき 作者:エドウィージ・ダンティカ 作品社 Amazon ★★★★ 1937年のドミニカ共和国。ハイチ移民のアマベルは、祖国で両親を亡くしてからドミニカに来てバレンシアという女性に仕えていた。バレンシアの夫ピコは軍人をしている。あるとき、ピコの運転…

莫言『蛙鳴』(2009)

蛙鳴(あめい) 作者:莫 言 発売日: 2011/05/01 メディア: ハードカバー ★★★★★ 2002年。高密県東北郷。劇作家のオタマジャクシこと万足が、日本の作家に手紙を書く。彼は伯母を題材に演劇を書こうとしていた。万足の伯母は若い頃から産婦人科医として村の赤ん…

アリ・スミス『両方になる』(2014)

両方になる (新潮クレスト・ブックス) 作者:スミス,アリ 新潮社 Amazon ★★★ カメラの章。21世紀のイギリス。10代の少女ジョージは、ゲリラ広告活動家の母親を抗生剤のアレルギーで亡くしていた。ジョージは母の生前、一緒にイタリアに行ってルネサンス期に描…

ニコルソン・ベイカー『U&I』(1991)

U & I 作者:ニコルソン・ベイカー 白水社 Amazon ★★★★ 1989年8月。2作目の小説を書き終えた「わたし」は、ドナルド・バーセルミの訃報に思いを馳せる。そして、「わたし」は自分に影響を与えたジョン・アップダイクについて、彼が生きているうちにエッセイを…

ポール・オースター『インヴィジブル』(2009)

インヴィジブル 作者:オースター,ポール 新潮社 Amazon ★★★★ 1967年。ユダヤ人の大学生アダム・ウォーカーが、国際情勢研究所の客員教授ルドルフ・ボルンと出会う。ボルンはウォーカーに、資金を提供するから雑誌を作ってそれで生計を立てるよう提案する。さ…

ギョーム・アポリネール『一万一千本の鞭』(1907)

一万一千本の鞭 (角川文庫) 作者:ギョーム・アポリネール,須賀 慣 KADOKAWA Amazon ★★★★ ブカレスト。大金持ちの家系のモニイ・ヴィベスクは、友人であるセルビアの副領事にオカマを掘られた後、パリに移住する。そこで女2人とスカトロプレイをするも、直後…

アフィニティ・コナー『パールとスターシャ』(2016)

パールとスターシャ (海外文学セレクション) 作者:アフィニティ・コナー 東京創元社 Amazon ★★★ 1944年。ユダヤ人の12歳の双子パールとスターシャが、家族と共にアウシュヴィッツ強制収容所に送られる。2人は家族から引き離され、医師のヨーゼフ・メンゲレが…

ウィリアム・シェイクスピア『ウィンザーの陽気な女房たち』(1597)

ウィンザーの陽気な女房たち―シェイクスピア全集〈9〉 (ちくま文庫) 作者:ウィリアム シェイクスピア 筑摩書房 Amazon ★★★ エリザベス朝のイングランド。太っちょの騎士フォルスタッフが、ウィンザーに住む2人の人妻――ペイジ夫人とフォード夫人――に恋文を送…