海外文学読書録

書評と感想

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

コルム・トビーン『ブルックリン』(2009)

ブルックリン (エクス・リブリス) 作者:コルム トビーン 白水社 Amazon ★★★ 1951年。アイルランドの田舎町エニスコーシーに住むアイリーシュは、まともな就職先がないなか、地元の個人商店で週一の仕事をする。その後、神父の伝手でアメリカに渡り、ブルック…

チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』(1975)

勝手に生きろ! (河出文庫) 作者:チャールズ ブコウスキー 河出書房新社 Amazon ★★★ 第二次世界大戦期。ロサンゼルス出身のヘンリー・チナスキーは、ニューオリンズやニューヨーク、フィラデルフィアなど、アメリカ各地を転々としながら、酒と女に溺れつつそ…

陳浩基『世界を売った男』(2011)

世界を売った男 (文春文庫) 作者:陳 浩基 文藝春秋 Amazon ★★ 2003年の香港。夫と妊婦が惨殺された殺人事件が発生、許友一巡査部長もその捜査に携わっていた。ところが、許が前日の二日酔いから車の中で目覚めると、一晩のうちに世の中は2009年になっていた…

閻連科『硬きこと水のごとし』(2001)

硬きこと水のごとし 作者:閻連科 河出書房新社 Amazon ★★★ 文化大革命期。程崗鎮に住む農民・高愛軍は、村の有力者の娘婿になった後、軍に入隊して穴掘りをしていた。彼は除隊後に夏紅梅という若い女と運命的な出会いを果たす。夏紅梅は鎮の有力者の息子と結…

ニック・ホワキン『二つのヘソを持った女』(1961)

二つのヘソを持った女 (アジアの現代文学 9 フィリピン) 作者:ニック・ホワキン めこん Amazon ★★★ 香港。獣医師のペペは両親がフィリピン人だったものの、彼自身は一度も祖国の土を踏んだことがなかった。そんな彼の元にフィリピンから名門一族の娘コニーが…

E・M・フォースター『天使も踏むを恐れるところ』(1905)

天使も踏むを恐れるところ 作者:E.M. フォースター 白水社 Amazon ★★★ ソーストンの中産階級に嫁いだリリアは、娘アーマを産んでからしばらくして夫を亡くす。リリアとアーマは、夫の家族であるヘリトン家の干渉を受けながら2人で暮らしていた。そんなあると…

ジョージ・ソーンダーズ『短くて恐ろしいフィルの時代』(2005)

短くて恐ろしいフィルの時代 (河出文庫) 作者:ジョージ・ソーンダーズ 河出書房新社 Amazon ★★★ 〈内ホーナー国〉は国民が一度に1人しか入れないほど小さく、残りの6人は、〈内ホーナー国〉を取り囲んでいる〈外ホーナー国〉内に設定された〈一時滞在ゾーン…

マルカム・ブラドベリ『超哲学者マンソンジュ氏』(1987)

超哲学者マンソンジュ氏 作者:マルカム ブラドベリ 平凡社 Amazon ★★★★ 無名の哲学者マンソンジュ。しかし、彼がいなかったらエーコも知られぬまま終わっていただろうし、デリダが生まれることもなかったと言われている。マンソンジュは自身を不在の神と称し…

ポール・ハーディング『ティンカーズ』(2009)

ティンカーズ (エクス・リブリス) 作者:ポール ハーディング 白水社 Amazon ★★★ 80歳のジョージ・ワシントン・クロスビーは退職後に時計修理の仕事をしており、現在は死の床にあった。彼が子供の頃、父のハワードは貧しいセールスマンをしていたが、ジョージ…

ジェイムズ・ボールドウィン『もう一つの国』(1962)

もう一つの国 (1977年) (集英社文庫) 作者:ボールドウィン Amazon ★★★ マンハッタン。ハーレムでジャズバンドのドラムを叩く黒人ルーファスは、南部からやってきた白人レオナと肉体関係を結び同棲する。やがてルーファスはレオナを虐待、発狂した彼女は家族…