海外文学読書録

書評と感想

2018-01-01から1年間の記事一覧

ミュリエル・スパーク『あなたの自伝、お書きします』(1981)

あなたの自伝、お書きします 作者: ミュリエルスパーク,Muriel Spark,木村政則 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2016/07/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る ★★★ 1949年。フラー・トールボットは小説第一作を書き上げて、間もな…

2018年に読んだ274冊から星5の15冊を紹介

このブログでは原則的に海外文学しか扱ってないが、実は日本文学やノンフィクションも陰でそこそこ読んでおり、それらを読書メーターに登録している。 今回、2018年に読んだすべての本から、最高点(星5)を付けた本をピックアップすることにした。読書の参…

ミュリエル・スパーク『ブロディ先生の青春』(1961)

ブロディ先生の青春 作者:ミュリエル スパーク 河出書房新社 Amazon ★★★ 1930年代のエディンバラ。マーシア・ブレイン女子学院の中等部教師ジーン・ブロディは、進歩的な教師として校長に目をつけられていた。彼女はお気に入りの生徒を集めて「ブロディ隊」…

ジョン・チーヴァー『巨大なラジオ/泳ぐ人』(1978)

巨大なラジオ / 泳ぐ人 作者:チーヴァー,ジョン 新潮社 Amazon ★★★★ 短編集。「巨大なラジオ」、「ああ、夢破れし街よ」、「サットン・プレイス物語」、「トーチソング」、「バベルの塔のクランシー」、「治癒」、「引っ越し日」、「シェイディー・ヒルの泥…

マリオ・バルガス=リョサ『アンデスのリトゥーマ』(1993)

アンデスのリトゥーマ 作者:マリオ・バルガス=リョサ 岩波書店 Amazon ★★★★ ペルー。治安警備隊の伍長リトゥーマは、助手のトマスと共にアンデスの山中にある鉱山町ナッコスに駐屯していた。そこで3人の男が行方不明になる。彼らはテロリストに殺されたのか…

P・G・ウッドハウス『ジーヴスとねこさらい』(1974)

ジーヴスとねこさらい (ウッドハウス・コレクション) 作者:P・G・ウッドハウス 国書刊行会 Amazon ★★★ 有閑青年のバーティーが、療養のためにジーヴスを連れてメイドン・エッグスフォードという田舎に赴く。現地ではブリスコー大佐とクック氏が対立しており…

笑笑生『金瓶梅』(1573-1620?)

金瓶梅 全10冊セット (岩波文庫) 岩波書店 Amazon 新訳 金瓶梅 上巻 鳥影社 Amazon ★★★ 宋の徽宗の時代。河北で薬屋を営む西門慶は、人妻の潘金蓮と密通してその夫・武大を毒殺させる。武大の弟・武松が復讐に行くも、2人は運よく助かるのだった。西門慶の第…

呉明益『自転車泥棒』(2015)

自転車泥棒 (文春文庫 コ 21-1) 作者:呉 明益 文藝春秋 Amazon ★★★ 作家の「ぼく」は、20年前(1993年)に父親が自転車と共に失踪して以来、古い自転車を集めるようになった。父親の自転車はどこに消えたのか? と長年疑問に思っていたが、あるときコレクタ…

ギ・ド・モーパッサン『女の一生』(1883)

女の一生 (光文社古典新訳文庫) 作者:モーパッサン 光文社 Amazon ★★★★ 男爵の一人娘ジャンヌが、17歳になって修道院の寄宿舎から出てくる。間もなく彼女は子爵のジュリアンと出会い、彼と結婚するのだった。コルシカへのハネムーンまでは比較的良好な関係だ…

ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』(1857)

ボヴァリー夫人(新潮文庫) 作者:フローベール 新潮社 Amazon ★★★★ 開業医のシャルル・ボヴァリーが、年増の妻を病気で亡くす。彼は農家の一人娘エマを後妻に迎えるのだった。エマは物語のような結婚生活を夢見ていたが、やがてシャルルの凡庸さに失望する…

ミロスラフ・ペンコフ『西欧の東』(2011)

西欧の東 (エクス・リブリス) 作者:ミロスラフ・ペンコフ 白水社 Amazon ★★★ 短編集。「マケドニア」、「西欧の東」、「レーニン買います」、「手紙」、「ユキとの写真」、「十字架泥棒」、「夜の地平線」、「デヴシルメ」の8編。 女性が六十年も大事にとっ…

ナオミ・オルダーマン『パワー』(2016)

パワー 作者:ナオミ・オルダーマン 河出書房新社 Amazon ★★ 突如、世界各地で少女たちが手から雷霆を放つことが出来るようになった。アメリカに住むアリ―もその一人で、彼女は「声」の言われるがまま、「その時」に向かって行動する。イヴと名乗ったアリ―は…

オリヴィエ・ゲーズ『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』(2017)

ヨーゼフ・メンゲレの逃亡 (海外文学セレクション) 作者:オリヴィエ・ゲーズ 東京創元社 Amazon ★★★★ アウシュヴィッツ強制収容所に勤務し、囚人の選別や人体実験を行って「死の天使」と渾名されたヨーゼフ・メンゲレ。その彼が1949年に偽名を使ってアルゼン…

フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』(2009)

犯罪 (創元推理文庫) 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 Amazon ★★★★ 連作短編集。「フェーナー氏」、「タナタ氏の茶盌」、「チェロ」、「ハリネズミ」「幸運」、「サマータイム」、「正当防衛」、「緑」、「棘」、「愛情」、「エチオピ…

リュドミラ・ウリツカヤ『女が嘘をつくとき』(2008)

女が嘘をつくとき (新潮クレスト・ブックス) 作者:リュドミラ ウリツカヤ 新潮社 Amazon ★★★ 連作短編集。「ディアナ」、「ユーラ兄さん」、「筋書きの終わり」、「自然現象」、「幸せなケース」、「生きる術」の6編。 女のたわいない嘘と男の大がかりな虚言…

レアード・ハント『優しい鬼』(2012)

優しい鬼 作者:レアード・ハント 発売日: 2015/10/07 メディア: 単行本 ★★★★ インディアナ州に住む14歳のジニーが、親戚のライナス・ランカスターの口車に乗って彼と結婚、ケンタッキー州シャーロット郡にある「楽園」に移住する。ライナスは独裁的な人物で…

ジョイス・キャロル・オーツ『ジャック・オブ・スペード』(2015)

ジャック・オブ・スペード 作者:ジョイス・キャロル・オーツ 河出書房新社 Amazon ★★★ 売れっ子ミステリ作家のアンドリュー・J・ラッシュは、ジャック・オブ・スペードという別の名義を使ってノワール小説を発表していた。ジャック・オブ・スペードは覆面作…

エドウィージ・ダンティカ『骨狩りのとき』(1998)

骨狩りのとき 作者:エドウィージ・ダンティカ 作品社 Amazon ★★★★ 1937年のドミニカ共和国。ハイチ移民のアマベルは、祖国で両親を亡くしてからドミニカに来てバレンシアという女性に仕えていた。バレンシアの夫ピコは軍人をしている。あるとき、ピコの運転…

莫言『蛙鳴』(2009)

蛙鳴(あめい) 作者:莫 言 発売日: 2011/05/01 メディア: ハードカバー ★★★★★ 2002年。高密県東北郷。劇作家のオタマジャクシこと万足が、日本の作家に手紙を書く。彼は伯母を題材に演劇を書こうとしていた。万足の伯母は若い頃から産婦人科医として村の赤ん…

アリ・スミス『両方になる』(2014)

両方になる (新潮クレスト・ブックス) 作者:スミス,アリ 新潮社 Amazon ★★★ カメラの章。21世紀のイギリス。10代の少女ジョージは、ゲリラ広告活動家の母親を抗生剤のアレルギーで亡くしていた。ジョージは母の生前、一緒にイタリアに行ってルネサンス期に描…

ニコルソン・ベイカー『U&I』(1991)

U & I 作者:ニコルソン・ベイカー 白水社 Amazon ★★★★ 1989年8月。2作目の小説を書き終えた「わたし」は、ドナルド・バーセルミの訃報に思いを馳せる。そして、「わたし」は自分に影響を与えたジョン・アップダイクについて、彼が生きているうちにエッセイを…

ポール・オースター『インヴィジブル』(2009)

インヴィジブル 作者:オースター,ポール 新潮社 Amazon ★★★★ 1967年。ユダヤ人の大学生アダム・ウォーカーが、国際情勢研究所の客員教授ルドルフ・ボルンと出会う。ボルンはウォーカーに、資金を提供するから雑誌を作ってそれで生計を立てるよう提案する。さ…

ギョーム・アポリネール『一万一千本の鞭』(1907)

一万一千本の鞭 (角川文庫) 作者:ギョーム・アポリネール,須賀 慣 KADOKAWA Amazon ★★★★ ブカレスト。大金持ちの家系のモニイ・ヴィベスクは、友人であるセルビアの副領事にオカマを掘られた後、パリに移住する。そこで女2人とスカトロプレイをするも、直後…

アフィニティ・コナー『パールとスターシャ』(2016)

パールとスターシャ (海外文学セレクション) 作者:アフィニティ・コナー 東京創元社 Amazon ★★★ 1944年。ユダヤ人の12歳の双子パールとスターシャが、家族と共にアウシュヴィッツ強制収容所に送られる。2人は家族から引き離され、医師のヨーゼフ・メンゲレが…

ウィリアム・シェイクスピア『ウィンザーの陽気な女房たち』(1597)

ウィンザーの陽気な女房たち―シェイクスピア全集〈9〉 (ちくま文庫) 作者:ウィリアム シェイクスピア 筑摩書房 Amazon ★★★ エリザベス朝のイングランド。太っちょの騎士フォルスタッフが、ウィンザーに住む2人の人妻――ペイジ夫人とフォード夫人――に恋文を送…

リュドミラ・ウリツカヤ『ソーネチカ』(1997)

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス) 作者:リュドミラ ウリツカヤ 新潮社 Amazon ★★★ ソヴィエト時代。ユダヤ人にして読書好きのソーネチカは、第二次世界大戦が勃発したときに疎開し、地元の図書館で働いていた。そこへ反体制の芸術家ロベルトがやってくる…

ジェイムズ・ハドリー・チェイス『悪女イヴ』(1945)

悪女イヴ【新版】 (創元推理文庫) 作者:ジェイムズ・ハドリー・チェイス 東京創元社 Amazon ★★★ 肉体労働者だったクライヴは、親しくしていた作家から死に際に戯曲の原稿を渡され、それを自分の作品だと偽って世に発表する。戯曲が当たって有名作家になった…

ヤロスラフ・ハシェク『兵士シュヴェイクの冒険』(1921-23)

兵士シュヴェイクの冒険 1 (岩波文庫 赤 773-1) 作者:ハシェク 岩波書店 Amazon ★★★ 1914年。フェルジナント大公がサラエヴォでセルビア人に暗殺された。ボヘミア王国(チェコ)のプラハで犬の売買を生業にしているシュヴェイクは、何年か前に軍の医務委員会…

ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』(2011)

屋根裏の仏さま (新潮クレスト・ブックス) 作者:オオツカ,ジュリー 新潮社 Amazon ★★★★ 20世紀初頭。下は12歳から上は37歳の娘たちが、写真でしか知らない結婚相手を頼りに日本から船でアメリカに向かう。彼女たちは来るべき新生活に夢を見ていたが、現実は…

李昂『海峡を渡る幽霊』(2018)

海峡を渡る幽霊:李昂短篇集 作者:李昂 白水社 Amazon ★★★ 日本オリジナル編集の短編集。「色陽」、「西蓮」、「水麗」、「セクシードール」、「花嫁の死化粧」、「谷の幽霊」、「海峡を渡る幽霊」、「国宴」の8編。 女性作家はエレベーターを降りると、行き…