海外文学読書録

書評と感想

ブッカー賞

ダグラス・スチュアート『シャギー・ベイン』(2020)

シャギー・ベイン 作者:ダグラス スチュアート 早川書房 Amazon ★★★ 1980年代のグラスゴー。少年シャギーにはアグネスという美人の母親がおり、姉・兄・祖父母とともに貧困生活を送っていた。アグネスは美人であるものの薄幸で、ろくでもない男に捨てられて…

アンナ・バーンズ『ミルクマン』(2018)

ミルクマン 作者:バーンズ,アンナ 河出書房新社 Amazon ★★★★ 18歳の「私」の前にミルクマンという中年男が現れる。「私」の所属するコミュニティは体制派である「海の向こう側」と揉めており、反体制派が爆弾テロなどで暗躍していた。「私」と彼氏のメイビー…

マーガレット・アトウッド『誓願』(2019)

誓願 作者:マーガレット アトウッド 早川書房 Amazon ★★★★ 〈侍女〉のオブフレッドが赤ん坊を連れて逃亡してから15年後。権力の中枢にいる小母リディアは、危険を犯しながら図書館で手記を認めていた。ギレアデ共和国では、オブフレッドの連れ去った赤ん坊が…

マーロン・ジェイムズ『七つの殺人に関する簡潔な記録』(2014)

七つの殺人に関する簡潔な記録 作者:マーロン ジェイムズ 早川書房 Amazon ★★★★ 1976年。ジャマイカでは社会主義政党の人民国家党(PNP)と、保守政党のジャマイカ労働党(JLP)が対立していた。両者はギャングを支援して内戦に近いテロの応酬をしており、CI…

ジョージ・ソーンダーズ『リンカーンとさまよえる霊魂たち』(2017)

リンカーンとさまよえる霊魂たち 作者:ジョージ・ソーンダーズ 河出書房新社 Amazon ★★★★ 1862年。南北戦争の最中、リンカーン大統領の息子ウィリーが急逝する。ウィリーは防腐処理を施されて墓地に葬られたが、そこには自分の死を受け入れられない霊魂たち…

リチャード・フラナガン『奥のほそ道』(2013)

奥のほそ道 作者:リチャード・フラナガン 白水社 Amazon ★★★ 1915年頃にタスマニアで生まれたドリゴ・エヴァンスは、本土の大学で勉強して外科医になり、第二次世界大戦では将官として従軍することになった。ところが、彼は日本軍の捕虜になってタイの収容所…

ヒラリー・マンテル『罪人を召し出せ』(2012)

罪人を召し出せ 作者:ヒラリー マンテル 早川書房 Amazon ★★★★ 1535年秋。イングランド王ヘンリー8世はアン・ブーリンと再婚するも、彼女が妊娠している間に女官のジェーン・シーモアに愛情を抱くようになる。そんななか、秘書官のトマス・クロムウェルはア…

ヒラリー・マンテル『ウルフ・ホール』(2009)

ウルフ・ホール (上) 作者:ヒラリー・マンテル,Hilary Mantel 早川書房 Amazon ★★★ 16世紀。イングランド王ヘンリー8世は王妃と離婚したがっていた。下層階級出身のトマス・クロムウェルは、出世してウルジー枢機卿に仕えるも、枢機卿は王の離婚問題で下手…

ジュリアン・バーンズ『終わりの感覚』(2011)

終わりの感覚 (新潮クレスト・ブックス) 作者:ジュリアン バーンズ Shinchosha/Tsai Fong Books Amazon ★★★ 高校時代、「私」と 仲間たちはエイドリアンの哲学的知性を評価して親友になった。卒業後、彼はケンブリッジ大学に進学し、「私」の元カノであるベ…