海外文学読書録

書評と感想

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』(1999)

停電の夜に (新潮文庫) 作者:ジュンパ ラヒリ 新潮社 Amazon ★★★★ 短編集。「停電の夜に」、「ピルザダさんが食事に来たころ」、「病気の通訳」、「本物の門番」、「セクシー」、「セン夫人の家」、「神の恵みの家」、「ビビ・ハルダーの治療」、「三度目で…

アラン・ロブ=グリエ『嘘をつく男』(1968/仏=伊=チェコスロバキア)

嘘をつく男 ジャン=ルイ・トランティニャン Amazon ★★★ 第二次世界大戦末期のスロバキア共和国。そこは当時ナチスの傀儡政権だった。スーツ姿の男(ジャン=ルイ・トランティニャン)が森のなかで兵士に銃撃されるも、何とかして小さな村に逃げのびる。彼の…

アラン・ロブ=グリエ『ヨーロッパ横断特急』(1966/仏=ベルギー)

ヨーロッパ横断特急 ジャン=ルイ・トランティニャン Amazon ★★★ 麻薬の運び屋エリアス(ジャン=ルイ・トランティニャン)が、パリ駅でブツの入ったアタッシュケースを受け取り、それを持ってヨーロッパ横断特急に乗り込む。目的地はアントワープ。一方、同…

リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』(2018)

オーバーストーリー 作者:パワーズ,リチャード 新潮社 Amazon ★★★ 芸術家のニコラス・ホーエルには、南北戦争前から四世代にわたって栗の木を育て、その様子を写真に収めてきた祖先がいた。そんな彼がオリヴィアという女子大生と出会う。彼女は感電して死の…

アラン・ロブ=グリエ『不滅の女』(1963/仏=伊=トルコ)

不滅の女 フランソワーズ・ブリオン Amazon ★★★ トルコ。ベイコイで臨時教員をしているフランス人の男(ジャック・ドニオル=バルクローズ )が、休暇を過ごすためイスタンブールにやって来る。海岸で女(フランソワーズ・ブリヨン)と出会った彼は、車で送…

フェミニズム文学21選+1 ~これであなたもフェミニストになれる!~

ネットでは男女ネタで意見が対立することが多く、良くも悪くも議論が盛んです。最近では、日本赤十字社の献血ポスターを巡って侃々諤々の大議論が巻き起こりました。ポスターに使われた『宇崎ちゃんは遊びたい!』【Amazon】のイラストに対し、「過度に性的…

ガブリエレ・サルヴァトレス『インビ​ジブル・スクワッド』(2014/伊=仏)

インビ​ジブル・スクワッド(字幕版) ルドヴィコ・ジラルデッロ Amazon ★★ 9年生のミケーレ(ルドヴィコ・ジラルデッロ)は学校で同級生からいじめられていた。ところが、彼はあることがきっかけで透明人間になる能力を手に入れる。それを使っていじめっ子…

エルネスト・ディアス=エスピノーサ『ミラージュ』(2007/チリ=米)

ミラージュ(字幕版) マルコ・ザロール Amazon ★★★ クラブの用心棒マルコ(マルコ・ザロール)は、過去に両親を強盗に殺されていた。弟のチトはそのせいで心を閉ざし、精神病院に入院している。マルコはジョギング中に強盗団に遭遇、相手の目出し帽を奪って…

李昂『夫殺し』(1983)

夫殺し 作者:李 昂 JICC出版局 Amazon ★★★ 台湾の鹿城。豚の屠畜を生業とする陳江水が、妻の林市に斬殺された。林市は死体を八分に切断して遺棄しようとするも、隣家に見つかって逮捕されてしまう。物語はそこまでの経緯を語っていく。母親が死んで天涯孤独…

サラ・ガヴロン『未来を花束にして』(2015/英)

未来を花束にして(字幕版) キャリー・マリガン Amazon ★★★ 1912年のロンドン。夫と幼い息子の3人で暮らしているモード・ワッツ(キャリー・マリガン)は、洗濯場で過酷な労働に従事していた。ある日、配達の仕事で外に出たモードは、女性参政権を求めて過激…

ジミー・チン、エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ『MERU/メルー』(2015/米)

MERU/メルー (字幕版) コンラッド・アンカー Amazon ★★★ 登山を題材にしたドキュメンタリー映画。ヒマラヤのメルー峰シャークスフィンは前人未到の壁だった。コンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズタークの3人が、その壁に挑戦する。一度は失…

ウディ・アレン『マッチポイント』(2005/英=米=ルクセンブルク)

マッチポイント (字幕版) ジョナサン・リース・マイヤーズ Amazon ★★★★ アイルランド人のクリス(ジョナサン・リース=マイヤーズ)はプロテニス選手だったが、キャリアに見切りをつけてイギリスのテニスクラブでコーチをしている。そこで上流階級のトム(マ…

オルハン・パムク『赤い髪の女』(2016)

赤い髪の女 作者:オルハン パムク 早川書房 Amazon ★★★★ 左翼活動家の父が失踪した。息子のジェムは大学進学費用を稼ぐため、期間限定で井戸掘り親方の見習い弟子になる。親方はジェムに対して父親のように接してくれていた。あるとき、ジェムは赤い髪の女を…

ミシェル・ウエルベック『セロトニン』(2019)

セロトニン 作者:ミシェル・ウエルベック 河出書房新社 Amazon ★★★ 46歳のフロラン=クロード・ラブルストは、農業食糧省の契約調査員として高給を得ている。彼には20歳年下の恋人ユズがいた。ユズは裕福な日本人だったが、変態性欲の持ち主で、ラブルストは…

ロクサーヌ・ゲイ『むずかしい女たち』(2017)

むずかしい女たち 作者:ロクサーヌ・ゲイ 河出書房新社 Amazon ★★★★★ 短編集。「ついていく」、「水、その重みのすべて」、「カインの徴」、「むずかしい女たち」、「フロリダ」、「ラ・ネグラ・ブランカ」、「赤ん坊の腕」、「ノース・カントリー」、「どん…

ジュゼッペ・トルナトーレ『鑑定士と顔のない依頼人』(2013/伊)

鑑定士と顔のない依頼人(字幕版) ジェフリー・ラッシュ Amazon ★★ 美術鑑定士のヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、自身が主催するオークションで、ビリー(ドナルド・サザーランド)と共謀して女性の肖像画を格安で落札していた。ヴァー…

サイモン・カーティス『黄金のアデーレ 名画の帰還』(2015/米=英)

黄金のアデーレ 名画の帰還(字幕版) ヘレン・ミレン Amazon ★★★ 1998年のロサンゼルス。ナチの迫害から逃れてオーストリアから亡命してきたマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)が、弁護士のランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)にある依頼を…

ブログについてのアンケート2019

基本的にこのブログは自分のための備忘録として書いてるので、あまり読者のニーズを考えてない。だから文学だったり映画だったりアニメだったり、ジャンルを定めずふらふらしている。ブログとしての軸が定まってない。ただ、それでも少数ながら閲覧してくれ…

オリヴァー・ストーン『スノーデン』(2016/米=仏=独)

スノーデン(字幕版) ジョセフ・ゴードン=レヴィット Amazon ★★★ 2013年6月。NSA(アメリカ国家安全保障局)の職員エドワード・スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が、香港でガーディアン紙の記者と接触。NSAが世界中のメールやSNS、電話などの通…

ジム・シャーマン『ロッキー・ホラー・ショー』(1975/英)

ロッキー・ホラー・ショー (字幕版) Richard O'Brien Amazon ★★★★★ 婚約中のブラッド(バリー・ボストウィック)とジャネット(スーザン・サランドン)は、友人の結婚式の帰り道、豪雨に見舞われた挙げ句車がパンクしてしまう。電話を借りに近くの屋敷を訪れ…

クリスティーナ・ダルチャー『声の物語』(2018)

声の物語 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:クリスティーナ ダルチャー 早川書房 Amazon ★★ アメリカ。ピュア・ムーブメントを支持する大統領が政権をとったことで、女性の人権が著しく制限されることになった。女性は家庭に押し込まれたうえ、手首にワー…

『ケイゾク』(1999)

ケイゾク DVDコンプリートBOX 中谷美紀 Amazon ★★ 「ケイゾク」と呼ばれる未解決事件を担当する警視庁捜査一課弐係。そこに東大卒のキャリア官僚・柴田純(中谷美紀)が配属される。彼女と元公安の刑事・真山徹(渡部篤郎)が、様々な事件を解決していく。さ…

余華『兄弟』(2005)

兄弟 作者:余華,泉京鹿 アストラハウス Amazon ★★★ 母の再婚により、李光頭は相手方の連れ子・宋鋼と兄弟になった。折しも時は文化大革命。李光頭の義父は地主のレッテルを貼られて倉庫に監禁される。一方、母は体調を崩して上海の病院に入院していた。やが…