海外文学読書録

書評と感想

ガブリエレ・サルヴァトレス『インビ​ジブル・スクワッド』(2014/伊=仏)

インビ​ジブル・スクワッド(字幕版)

★★

9年生のミケーレ(ルドヴィコ・ジラルデッロ)は学校で同級生からいじめられていた。ところが、彼はあることがきっかけで透明人間になる能力を手に入れる。それを使っていじめっ子に復讐した後、美少女のステラと仲良くなる。折しも、学校では少年2人が失踪していた。その後、ステラが何者かに誘拐される。

ヒーローものというよりは青春ものといった感じで、一番の見どころはミケーレとステラの交流だろう。ヒロインのステラがとても可愛くて、ロリコンじゃない僕でも目を瞠るほどだった。ミケーレが正体を明かさず、透明のままステラと仲良くなるところはキュンとする。一方、後半ではミケーレが超能力を駆使して悪の組織から友達を助けるのだけど、この部分は大して面白くない。ヒーローと言っても透明になれる以外は普通の子供なので、活躍の仕方も隙間を縫うような感じなのだ。せっかく格好いいコスチュームを着てるのだから、もっとスカッとしたのを観たかった。

ポール・バーホーベン監督の『インビジブル』【Amazon】では、透明人間になった主人公がその能力を悪用して女性の裸を覗き見している。それを踏まえてか、本作ではミケーレが女子更衣室に侵入して着替えを覗き見していて、やはりこの能力の使いみちは限られてると思った。男はいくつになっても馬鹿なことしかしないのだ。でも、考えてみれば透明になってもやれることって少ないし、場合よっては見えないことによって不利益を被ることもある。たとえば、道を歩いていたら車に跳ね飛ばされるとか。僕も子供の頃は透明人間にロマンを感じていたけれど、大人になってみるとつくづく不要な能力だと思う。

いじめっ子を排除せず、むしろ仲間にして一緒に行動するという展開は、『シング・ストリート 未来へのうた』にもあった。これって僕が知らないだけで実は王道のパターンなのだろうか*1。僕だったら絶対に許さないし、とことんまで地獄を見せるだろう。登場人物を無駄なく使うという意味では理解できるけれど、現実の行動としてはちょっと納得できない。だって、もう還暦近いのに未だに子供時代のいじめを引きずって恨み言を述べてる人がTwitterにいるからね。人間、自分が受けた仕打ちはいつまで経っても忘れないようである。

超能力を獲得した原因が放射能にあるのは随分と古典的だと思った。あと、敵の組織がロシアなところも悪役感があっていい。欧米VSロシアという構図は、21世紀になっても変わらないようだ。

*1:ドラえもん』【Amazon】に出てくるジャイアンは、劇場版だといい奴なのでノーカン。