海外文学読書録

書評と感想

『ザ・ボーイズ』(2019)

★★★★

超能力を持ったスーパーヒーローが活躍するアメリカ。200名以上のヒーローたちをヴォート社が管理し、選りすぐりの7人をセブンと呼んでメディアに露出させていた。ある日、家電販売員のヒューイ(ジャック・クエイド)が路上でガールフレンドと話をしていると、ヒーローのAトレイン(ジェシー・T・アッシャー)が超高速で駆け抜けて彼女をバラバラにしてしまう。以降、ヒューイは元FBI捜査官のビリー・ブッチャー(カール・アーバン)に誘われ、ヒーローへの復讐に身を投じる。ビリーはセブンのリーダーであるホームランダー(アントニー・スター)に強い恨みを抱いていた。

原作はガース・エニス、ダリック・ロバートソンの同名コミック【Amazon】。

評判がいいから観たけれど、ヒーローものが苦手な僕でも楽しめた。シーズン2の制作も決定してるらしい。

ヒーローが政治経済にがっちり組み込まれていて、国内の治安維持から海外の軍事活動へと業務の幅を広げようとしている。そこへ復讐に燃えた一般人が戦いを挑むという図式になっており、「どうやって勝ちにいくのだろう?」と興味をおぼえながら観た。とにかくヒーローが強いの何の。特にセブンのリーダーを務めるホームランダーは無敵と言っていいほどだ。目からビームを出してあらゆるものを焼き尽くしているし、空を高速で自由に飛び回っているし、銃撃を受けても無傷でいる。おまけに透視能力もあるのだった。普通に考えて、一般人がこんなのに勝つのは無理ゲーだ。ホームランダー1人で世界征服ができるレベルである。物語をどう着地させるのか、ずっと気にしながら観ていた。

本作で面白かったのは、ヒーローがあくまで超能力を持った人間であり、内面はそこらの一般人と変わらないところだ。メディアの前では平和の象徴みたいな身振りをしているのに、裏では性欲だったり支配欲だったりに塗れていて、時には能力を悪用してゲスなこともしている。つまり、「メディアに出ている人間はすべて虚像」というのをヒーローに仮託して描いている。そして、彼らは人間であるがゆえに善か悪かはっきり分けることができない。たとえば、当初は巨悪に見えたホームランダーにも同情すべき要素があり、ドラマに奥行きが出ている。確かにヒーロー誕生の事情を考えると、彼らも被害者であると言えよう。諸悪の根源は、ヴォート社に代表される巨大資本ではないかと思える。

それにしても、本作はグロ描写が笑いに繋がっているところがいい。ヒューイの恋人が手だけ残してバラバラにされたシーンとか、透明人間のヒーローが爆殺されたシーンとか、女ヒーローが顔面騎乗で男を圧殺したシーンとか。これぞアメリカンという感じがする。あと、海のヒーロー・ディープ(チェイス・クロフォード)が、イルカとロブスターを救えなかったのも可笑しかった。どちらもさくっと死んでいる。本作のユーモアセンスはかなりツボだ。

というわけで、シーズン2も楽しみである。