海外文学読書録

書評と感想

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

マルグリット・ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』(1951)

ハドリアヌス帝の回想 作者:マルグリット・ユルスナール 発売日: 2008/12/16 メディア: 単行本 ★★★★★ 臨終間際のローマ皇帝ハドリアヌスが、後継者のマルクス・アウレリウスに宛てた回想録。帝国全土の旅、愛人アンティノウスの死、ユダヤ人政策の失敗、後継…

J・M・クッツェー『イエスの幼子時代』(2013)

イエスの幼子時代 作者:J・M・クッツェー 早川書房 Amazon ★★★ 初老の男シモンと5歳の少年ダビードは、移民船で知り合い行動を共にしていた。シモンはダビードの母親を探すために奔走する。移民受け入れセンターで住居と仕事をもらったシモンは、たまたま出…

ミシェル・ウエルベック『地図と領土』(2010)

地図と領土 (ちくま文庫) 作者:ミシェル ウエルベック 筑摩書房 Amazon ★★★★ 若い芸術家のジェドが、ミシュラン社の女性と知り合うことで人生が一変する。彼は女性の協力を得て展覧会で成功を収めた後、作家のミシェル・ウエルベックに仕事を依頼するように…

ポール・オースター『写字室の旅』(2007)

写字室の旅 作者:ポール オースター 新潮社 Amazon ★★★ どこか分からない部屋に一人軟禁されている記憶喪失の老人。語り手は彼をミスター・ブランクと名付ける。ミスター・ブランクの元には様々な男女がやってきて、彼はひょんなことから誰かが書いた物語を…

フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ』(2004)

プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが… 作者:フィリップ・ロス 集英社 Amazon ★★★ 1940年。チャールズ・リンドバーグが共和党から大統領選に出馬し、民主党のフランクリン・ローズヴェルトを破って大統領に就任する。リンドバーグは第二次大戦へ…

パトリック・モディアノ『エトワール広場/夜のロンド』(1968,69)

エトワール広場/夜のロンド 作者:パトリック・モディアノ 作品社 Amazon ★★ 中編集。「エトワール広場」、「夜のロンド」の2編を収録。 「エトワール広場」(1968) フランス人は皆、回想録を書く娼婦に、男色の詩人に、アラブ人のヒモに、麻薬中毒の黒人に、…

ジョン・マクガハン『ポルノグラファー』(1979)

ポルノグラファー 作者:ジョンマクガハン 発売日: 2011/12/23 メディア: 単行本 ★★★ ポルノ小説家の「僕」が、ダンスホールで知り合った女と肉体関係を結んで妊娠させる。女は「僕」のことを愛していて結婚を迫ってくるが、「僕」は女に恋愛感情を抱いていな…

ローラン・ビネ『HHhH――プラハ、1942年』(2009)

HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション) 作者:ローラン・ビネ 東京創元社 Amazon ★★★★ ナチス・ドイツの時代。ヒムラーの右腕だったラインハルト・ハイドリヒは、ユダヤ人大量虐殺の実質的な推進者になっていた。そんな彼を暗殺すべく、チェコ亡命政…

J・M・クッツェー『遅い男』(2005)

遅い男 作者:J・M・クッツェー 早川書房 Amazon ★★★★ 60歳のポールが交通事故で片足を失い、自宅で介護サービスを受けることになる。当初は介護士の態度が気に食わずに何人もクビにしていたが、マリアナという介護士と運命的な出会いを果たし、彼女に恋心を…

コーマック・マッカーシー『チャイルド・オブ・ゴッド』(1973)

チャイルド・オブ・ゴッド 作者:コーマック・マッカーシー,黒原 敏行 早川書房 Amazon ★★★★ アメリカ南部。貧乏白人のレスター・バラードは、車の中にあった男女の死体を発見してから人生が一変する。彼は女を死姦してそのまま死体を持ち帰り、家が火事にな…

ウンベルト・エーコ『ヌメロ・ゼロ』(2015)

ヌメロ・ゼロ (河出文庫) 作者:ウンベルト・エーコ 河出書房新社 Amazon ★★★ 1992年。文筆業のコロンナが、あらゆることについて真実を暴くことを目的とした特殊な新聞の創刊に関わることになる。編集部に出入りする彼は、ムッソリーニに関する陰謀論を聞か…