海外文学読書録

書評と感想

フェミニズム文学21選+1 ~これであなたもフェミニストになれる!~

ネットでは男女ネタで意見が対立することが多く、良くも悪くも議論が盛んです。最近では、日本赤十字社献血ポスターを巡って侃々諤々の大議論が巻き起こりました。ポスターに使われた『宇崎ちゃんは遊びたい!』【Amazon】のイラストに対し、「過度に性的ではないか」と物言いがついたのです。この件ではフェミニストとおたくが血みどろの争いを繰り広げました。

それはそれとして、このブログではタイトル通り海外文学を扱っています。近年流行しているフェミニスト文学についてもいくつか取り上げてきました。文学はジェンダーをどう表現しているのか? それを知るためにフェミニスト文学を読むことには意義があるでしょう。古典から現代文学まで。さらには海外文学から日本文学まで。いい機会なのでこのジャンルの本をまとめて紹介したいと思います。視野を広げるためにも是非、文学の冒険に旅立ってください。

なお、紹介した22作品のうち、14作品については詳細な感想を個別の記事に書いてます。紹介文の下にリンクを付記したので、興味がある方はそれをクリックしてください。

 

弁護士のヘルメルと結婚し、人形のように可愛がられていたノラが、ある事件を契機に自身の境遇を見直し、夫と3人の子供を捨てて家を出ていく。つまり、女性の自立を描いた戯曲です。何と言っても見所は終盤、ヘルメルとノラの論争でしょう。ヘルメルが夫や子供たちに対する義務を言い立てるのに対し、ノラは自分自身に対する義務を神聖なものとして挙げる。このやりとりには痺れました。ノラは妻や母親である以前に人間なのです。また、本作はノラの去就にばかり目が行きがちですが、脇役であるリンネ夫人や乳母の生き方も参考になります。

 

 

邦訳は『フェミニジア』(現代書館)。絶版。

ジャングルを探検していたアメリカの青年3人が、現地人から「女だけの国」の噂を聞き、それをフェミニジアと名付けて当地に乗り込みます。フェミニジアには文字通り女しか住んでおらず、人口は300万人、国の広さはオランダほどで、処女生殖によって女だけが生まれるようになっています。そこは「女らしさ」から解放されたユートピアでした。本作は1915年の小説ですが、女が「女」ではなく、「人」として扱われる社会を描いています。

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また、著者には「黄色い壁紙」という短編もあり、こちらもフェミニスト文学として重要な作品になっています。僕は『淑やかな悪夢』【Amazon】というアンソロジーで読みました。女性への抑圧を狂気と結びつけた画期的な短編です。

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