海外文学読書録

書評と感想

2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』(1960)

不在の騎士 (白水Uブックス) 作者:イタロ・カルヴィーノ 白水社 Amazon ★★★ 中世ヨーロッパ。シャルルマーニュ大帝は異教徒のサラセン軍と戦争していた。皇帝の下に集った騎士アジルールフォは、白い鎧を身に着けていたが、中身は空洞の「不在の騎士」として…

リチャード・パワーズ『エコー・メイカー』(2006)

エコー・メイカー 作者:リチャード パワーズ 新潮社 Amazon ★★★ ネブラスカ州。マークがトラックを運転中に事故に遭って意識不明の重体になる。姉のカリンが病院に駆けつけて彼を看病するも、意識を取り戻したマークは彼女のことを偽物だと思い込んでいた。…

ウンベルト・エーコ『前日島』(1994)

前日島 作者:ウンベルト エーコ 文藝春秋 Amazon ★★★★ 1643年。小貴族のロベルト・ド・ラ・グリーヴは、戸板一枚で海を漂流して一隻の船にたどり着く。見たところそこは無人のようだった。船からは島が見えるものの、ロベルトは泳げないので渡ることができな…

ジュリアン・バーンズ『人生の段階』(2013)

人生の段階 (新潮クレスト・ブックス) 作者:バーンズ,ジュリアン 新潮社 Amazon ★★★ (1) 19世紀。軍人フレッド・バーナビーと女優サラ・ベルナールは気球で空を飛んだ。(2) フレッド・バーナビーがサラ・ベルナールに結婚を申し込む。(3) 作家の「私」ことジ…

キャサリン・ダン『異形の愛』(1989)

異形の愛 作者:キャサリン・ダン 河出書房新社 Amazon ★★★★ 小人で禿のオリンピア・ビネウスキは、サーカスを運営する両親によって奇形になるよう生み出された。他にも、兄はアザラシ少年、姉はシャム双子、弟は超能力者に生まれついている。サーカスでは兄…

マヌエル・プイグ『天使の恥部』(1979)

天使の恥部 (白水Uブックス) 作者:マヌエル・プイグ 白水社 Amazon ★★★★ (1) 1936年。映画女優の女は、夫によって電流を流した鉄柵のなかに閉じ込められていた。彼女は死者との密約により、30歳になったら他人の心が読めるようになるという。女はスパイの男…

フランソワ・ラブレー『ガルガンチュア』(1534)

ガルガンチュア ガルガンチュアとパンタグリュエル1 (ちくま文庫) 作者:フランソワ・ラブレー 筑摩書房 Amazon ★★★★ 巨人族の王家に生まれたガルガンチュアは、長じてからパリに留学する。そこへ村人たちの些細ないざこざから祖国が攻め込まれて戦争になっ…

ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ『トランス=アトランティック』(1953)

トランス=アトランティック (文学の冒険シリーズ) 作者:ヴィトルド ゴンブローヴィッチ 国書刊行会 Amazon ★★★ 1939年8月。ポーランドからアルゼンチンに渡航したゴンブローヴィッチは、遠い祖国で戦争が始まったことを聞く。アルゼンチンに残ることにした彼…

コラム・マッキャン『世界を回せ』(2009)

世界を回せ 上 作者:コラム・マッキャン 河出書房新社 Amazon ★★★★★ 1970年代。ダブリンで生まれ育った「僕」は、修道士としてニューヨークに渡った弟コリガンを追うように渡米する。コリガンは売春婦への慈善活動と介護施設で老人介護をしていた。あるとき…

ブレット・イーストン・エリス『アメリカン・サイコ』(1991)

アメリカン・サイコ〈上〉 (角川文庫) 作者:ブレット・イーストン・エリス 角川書店 Amazon ★★★★ 80年代。ウォール街で働く26歳のパトリック・ベイトマンは、ブランドものに身を包み、仲間たちとレストランで会食したり、女たちとセックスしたりする生活に明…