海外文学読書録

書評と感想

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ジュリアン・バーンズ『太陽をみつめて』(1986)

太陽をみつめて (新しいイギリスの小説) 作者:ジュリアン バーンズ 白水社 Amazon ★★★ 1941年6月。戦闘機パイロットのトマス・プロッサーが、ドーヴァーの上空で太陽が2度昇るのを目撃する。そのことを本人から聞かされた17歳のジーン・サージャントは、空へ…

ジャネット・ウィンターソン『さくらんぼの性は』(1989)

さくらんぼの性は (白水Uブックス―海外小説の誘惑) 作者:ジャネット ウィンターソン 白水社 Amazon ★★★★ 17世紀半ばのロンドン。象を吹き飛ばし、オレンジを12個頬張ることができる巨漢の犬女が、テムズ川の泥の中で赤ん坊を拾い、ジョーダンと名付けて育て…

ロレンス・ダレル『セルビアの白鷲』(1957)

セルビアの白鷲 (文学のおくりもの 4) 作者:ロレンス・ダレル 晶文社 Amazon ★★ ユーゴスラビア南東部の山中で、英国大使館の職員が何者かに殺された。現地ではセルビア王党派の白鷲隊が、チトー政権を転覆させようと画策している。英国諜報員のメシュインは…

ブルース・チャトウィン『ウッツ男爵』(1988)

ウッツ男爵: ある蒐集家の物語 (白水uブックス―海外小説永遠の本棚) 作者:ブルース チャトウィン 白水社 Amazon ★★★ 1967年――プラハの春の前年――、語り手の「私」が取材のために一週間プラハに滞在する。彼はそこでマイセン磁器の蒐集家カスパール・ヨアヒム…

馮夢竜『平妖伝』(1620)

中国古典文学大系 (36) 作者:馮 夢竜 平凡社 Amazon ★★★ 宋の仁宗の時代。老婆の姿をした狐の聖姑姑が、滞在先の華陰県で蛋子和尚と出会う。和尚は卵から生まれた僧侶で、白雲洞の石壁から秘冊『如意冊』を写し取っていた。『如意冊』は春秋時代に白猿の化身…

デイヴィッド・ロッジ『考える…』(2001)

考える… 作者:デイヴィッド ロッジ 白水社 Amazon ★★★ イギリスの田園地帯にあるグロスター大学。そこの認知科学センターの所長にしてタレント教授でもあるラルフ・メッセンジャーは、女たらしのヤリチン男だった。彼は人間の意識について研究しており、自分…