海外文学読書録

書評と感想

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ジョナサン・リテル『慈しみの女神たち』(2006)

慈しみの女神たち 上 作者:ジョナサン・リテル 集英社 Amazon ★★★★ ナチス・ドイツ時代に法律家・保安部の役人・SS将校を勤め、戦後はフランスでレース工場の支配人になったマクシミリアン・アウエ。その彼が戦時中を回想する。法学博士にしてSS中尉の彼は、…

フラン・オブライエン『第三の警官』(1967)

第三の警官 (白水Uブックス/海外小説 永遠の本棚) 作者:フラン オブライエン 白水社 Amazon ★★★★ 若くして両親を亡くした「ぼく」は、仕事を雇人であるジョン・ディヴィニィに任せて自分は研究生活を送っていた。2人は同じベッドで寝るほど親密になっている…

マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家』(2000)

紙葉の家 作者:マーク・Z. ダニエレブスキー ソニーマガジンズ Amazon ★★★★ (1) 『紙葉の家』序文。盲目の老人ザンパノが急死する。彼の部屋にはドキュメンタリー映像『ネイヴィッドソン記録』についての原稿があった。ジョニー・トルーアントがそれに注釈を…

蘇童『河・岸』(2009)

河・岸 (エクス・リブリス) 作者:蘇 童 白水社 Amazon ★★★ 江南の町・油坊鎮。庫東亮の父・庫文軒は、革命で犠牲になった女性烈士の息子として地元の指導者になっていた。ところが、調査によってその血筋が誤りであるとされ、庫文軒は階級の異分子として失脚…

チャン・ジョンイル『LIES/嘘』(1996)

LIES/嘘 作者:蒋 正一 講談社 Amazon ★★★★ 38歳のJは元彫刻家で、現在はソウルで無為徒食の生活を送っていた。彼にはパリに留学している妻がいる。Jは知人の伝手で知り合った女子高生Yと安東市で会い、ラブホテルでセックスをする。彼女は処女だった。その後…

イレーヌ・ネミロフスキー『フランス組曲』(2004)

フランス組曲 作者: イレーヌネミロフスキー,野崎歓,平岡敦 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2012/10/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る ★★★★ (1) 「六月の嵐」。1940年初夏。パリにドイツ軍が進攻してくる。ブルジョワの一家や著名な…

スティーヴ・エリクソン『きみを夢みて』(2012)

きみを夢みて (ちくま文庫 え 18-1) 作者:スティーヴ エリクソン 筑摩書房 Amazon ★★★ バラク・オバマが大統領に当選した年のロサンジェルス。作家のザンと妻のヴィヴは、19ヶ月前にエチオピアの孤児院から幼い娘シバを引き取って養子にしていた。ザンとヴィ…

エミリオ・ルッス『戦場の一年』(1938)

戦場の一年 (白水uブックス―海外小説の誘惑) 作者:エミリオ ルッス 白水社 Amazon ★★★★★ 第一次世界大戦。イタリア軍の中尉である「わたし」は、無能な将軍の指揮のもと、オーストリアとの国境付近で塹壕戦を繰り返していた。迫撃砲と機関銃による攻撃、狙撃…

チゴズィエ・オビオマ『ぼくらが漁師だったころ』(2015)

ぼくらが漁師だったころ 作者:チゴズィエ オビオマ,Chigozie Obioma 早川書房 Amazon ★★★ 1996年のナイジェリア西部アクレ。9歳のベンジャミンと3人の兄たち(イケンナ、ボジャ、オベンベ)は、近所の川で魚を釣ることに熱中する。しかしその後、長男のイケ…

グレアム・グリーン『情事の終り』(1951)

情事の終り (新潮文庫) 作者:グレアム グリーン 新潮社 Amazon ★★★ 1946年。高級官吏のヘンリは、妻のサラァが他の男と不倫しているかもしれないと疑う。作家のベンドリクスは、ヘンリの代わりにサラァの監視を私立探偵に依頼するのだった。ところが、実はベ…