海外文学読書録

書評と感想

オリヴァー・ストーン『スノーデン』(2016/米=仏=独)

★★★

2013年6月。NSAアメリカ国家安全保障局)の職員エドワード・スノーデンジョセフ・ゴードン=レヴィット)が、香港でガーディアン紙の記者と接触NSAが世界中のメールやSNS、電話などの通信を傍受し、監視していることを告発する。彼はハワイに恋人のリンゼイ・ミルズ(シャイリーン・ウッドリー)を残していた。そこまでの経緯が語られていく。

監視社会はディストピア小説における定番の設定だけど、それが現実の世界で行われていたのには呆れるほかない。アメリカ政府は世界中の通信を監視することでイスラム過激派のテロに対抗し、さらには中国やロシア、イランといった真の脅威との戦いも見据えている。のみならず、日本やドイツ、オーストリアといった友好国の通信も抜け目なく監視していた。アメリカの諜報関係者は、「第三次世界大戦を防いだのは自分たちだ」と自負していて、まさに『裏切りのサーカス』で描かれたMI6と同じである。仮に第三次世界大戦が起きるとしたら、アメリカは間違いなく当事者になるだろう。その備えが必要なのは理解できるにしても、世界中の通信を監視するのはパラノイア的で薄気味悪い。

本作の原作になったルーク・ハーディング『スノーデンファイル』【Amazon】には、次のような記述がある。

NSAGCHQと協力して、海底の光ファイバーケーブルに盗聴器を仕掛けていた。おかげで英米両国は、全世界の通信内容の多くを読み取ることができた。秘密裁判所は通信事業者にデータの引き渡しを命令していた。さらに、グーグル、マイクロソフトフェイスブック、そしてスティーブ・ジョブズのアップルまで、シリコンバレーのほぼすべての有力企業がNSAと関係していた、とスノーデンは言う。NSAは、これらテクノロジー大手のサーバーに直接アクセスできることを認めている。(p.16)

やはりアメリカのIT企業は信用ならないと思う。ただ、そうは分かっていても、彼の製品を使わざるを得ないのが悲しいところだ。Googleなしのインターネットなんて想像できないし、WindowsiPhoneAndroid)なしの生活ももはやできない(Facebookはいらない)。インフラを支配することがいかに重要か身にしみて分かった。

インフラと言えば、スノーデンは横田基地に勤務していたとき、日本のインフラにマルウェアを仕込んだという。もし日本が同盟国でなくなった日には、送電網や病院、ダムなどが壊滅的な状況になるそうだ。こういうのを聞くと、アメリカと覇権を争っている中国は命知らずだと思う。これが日本だったらワンパンで殺されている。

映画として面白かったのは、機密情報の入ったマイクロSDカードをルービックキューブのなかに隠して外に持ち出すシーン。ここはなかなか機知に富んでいてアメリカらしいと思った。また、スノーデンが上司と巨大なスクリーン越しに通話するシーンも鮮烈だ。上司がスノーデンを追求するとき、その顔がどアップになって、「これはやばい、何でもお見通しだぞ」と思える。こういうのは映像作品ならではの表現で好ましい。