海外文学読書録

書評と感想

『ケイゾク』(1999)

★★

ケイゾク」と呼ばれる未解決事件を担当する警視庁捜査一課弐係。そこに東大卒のキャリア官僚・柴田純(中谷美紀)が配属される。彼女と元公安の刑事・真山徹(渡部篤郎)が、様々な事件を解決していく。さらに、真山には悲惨な過去があって……。

全11話。

このドラマは大昔にネットで知り合ったお兄さんに勧められた。長らく観る機会がなかったが、最近になって偶然プライム・ビデオで見かけたので視聴することにした。

シリーズ前半は天然娘の中谷美紀がキュートで、その造形は翌年に作られた『TRICK』【Amazon】の仲間由紀恵に受け継がれている。いつの時代も男はああいううぶで無防備な女が好きだと思う。露骨な言い方をすれば、処女っぽい女。ところが、終盤に入って雰囲気がシリアスになるとそういう部分は影を潜め、ヒロインの可愛さは減退していく。実に惜しいことである。

1話完結の事件はミステリとしてはやや強引ながらも、後味がほろ苦く、これはこれで作家性の強いドラマと言える。手術をめぐるジレンマが絡む第2話、母親と子供が離れ離れになる第3話、芸術に対する歪んだ愛情を描いた第7話が印象に残っている。僕がテレビドラマを見慣れていないせいか、45分のフォーマットはいささか冗長だったものの、週1で観るならギリギリ許容できるかもしれない。当時の日本人がどういう娯楽を享受していたのか知れたのは良かった。

1話完結の事件はまあまあ見れたが、真山をめぐる縦軸のエピソードがしんどかった。ひとことで言えば、荒唐無稽である。SWEEPという組織はファンタジーにも程があるし、早乙女管理官を殺して朝倉がそれに成り済ましていたというオチも納得できない。前者はそれこそバレたら日本を揺るがすスキャンダルだし、後者はさすがに周囲の人たちが気づくだろう。そもそも催眠術で人を操るという事件の構図がおかしい*1。全体的にアニメでやるようなことを実写でやっていて違和感がある。

渡部篤郎ぶっきら棒なセリフ回しが良かった。こういう演技をする人はなかなか見ないから新鮮である。また、鈴木紗理奈が重要な役どころを演じていたが、バラエティ番組の印象が強いせいか、終始場違いのように見えた。これは現代の映画に劇団ひとりが登場するときの感覚に似ている。俳優は妙なパブリックイメージがつくと損なので、なるべくバラエティ番組には出ないほうがいいと思う。

*1:「操り」はミステリでよく使われるモチーフだが、この方法は安直としか言いようがない。