海外文学読書録

書評と感想

岡本喜八『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971/日)

★★

1945年4月1日。米軍が沖縄本島に上陸する。大日本帝国陸軍は、温厚な牛島中将(小林桂樹)、冷静な八原高級参謀(仲代達矢)、豪快な長参謀長(丹波哲郎)を中心に迎撃に当たることになった。戦闘は八原高級参謀の提案により、洞窟陣地での防御戦を基本戦術とすることに。しかし戦闘が進むにつれ、多数の沖縄県民が犠牲になる。

この題材については、最近見たNHKスペシャル(「沖縄 "出口なき”戦場 ~最後の1か月で何が~」と「沖縄戦 全記録」)が出色の出来だった。沖縄戦について知りたければ、そのふたつを見たほうがいいと思う。逆に、俳優目当てだったら本作だろうか。特に八原博通役の仲代達矢、散髪屋役の田中邦衛がいい味を出していた。

日本の映画界は伝統的に戦争映画を撮る体力がないので、本作もその点では物足りない。『ザ・パシフィック』や『硫黄島からの手紙』【Amazon】がどれだけ貴重だったか再確認することになった。『日本のいちばん長い日』がなぜ良かったかと言えば、戦場を描いてないからで、日本映画はドラマで勝負するしかないのだろう。本邦において、大規模な戦争映画は概ね駄作になることが分かった。

本作でもっとも印象に残っているのが、終盤、米軍の戦車隊が迫ってくるなか、老婆が沖縄民謡に合わせて踊るシーン。老婆は発狂し、その裏では親子が心中している。このシーンには、沖縄県民の無念が凝縮されていて迫力がある。本作は全体的にしょぼいけれど、ここだけは目の覚めるような光景だった。

他にも、米軍の上陸を知った女性が「アメリカ殺すー!」と叫ぶシーン、また、大本営の将校が「沖縄は本土のためにある!」と増派を否定するシーンなどが強烈である。前者は『この世界の片隅に』【Amazon】を思い出した。当時の日本人は愛国教育によってあんな風になっていたのだろう。「普通の日本人」を知る手がかりとして興味深い。一方、後者は現代にまで続く沖縄の立ち位置を宣言していてぞっとする。戦中も戦後も、沖縄は本土のために犠牲になっていた。本土に住む我々は、自分たちの業を自覚すべきだと思う。

NHKスペシャルでは、八原博通がインパール作戦牟田口廉也に匹敵する大戦犯みたいに扱われていた。大量の沖縄県民を犠牲にする作戦を立てたのに、戦後までおめおめ生き残ったことについて遠回しに批判されている。それに対して本作は、冷静な知将として彼を描いていた。あくまで軍人としての職務を忠実にこなしていたという感じである。戦犯と知将、どちらが彼の実像なのだろう? いずれにせよ、八原博通は沖縄戦のキーパーソンなわけで、この人物をどう評価すべきかは難しい。