海外文学読書録

書評と感想

サム・ライミ『スパイダーマン3』(2007/米)

★★★

ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)は学業もヒーロー活動も順調で、メリー・ジェーン(キルスティン・ダンスト)との交際も上手く行っていた。ある日、ニュー・ゴブリンと化した親友ハリー・オズボーン(ジェームズ・フランコ)が襲撃してくる。そこから色々とドラマがあり、サンドマントーマス・ヘイデン・チャーチ)やヴェノム(トファー・グレイス)といったヴィランと戦うことになる。

『スパイダーマン2』の続編。

糸を使って縦横無尽に移動するスパイダーマンは典型的な都市のヒーローである。彼は建物が密集する都市だからこそ活躍できる。これが何もない平原だったらどうにもならない(糸をくっつける場所がないから)。都市には高さがあり奥行きがある。重力の支配を受けつつ重力に抗って動く空間描写が本作の魅力だろう。そういう意味で糸を使ったアクションは唯一無二のものであった。

スパイダーマンが黒くなってダークサイドに落ちるところは分かりやすい。黒くなったのは宇宙から来た寄生生物が原因で、この生物は宿主の特性――とりわけ攻撃性――を増幅させるのだという。ダークサイドに落ちたピーターは見るからに感じが悪くなっていた。しかし、それ以前にピーターは慢心して感じが悪くなっている。というのも、ヒーロー活動が市民に認められてちやほやされていたから。慢心した彼はメリー・ジェーンにデリカシーのない対応をしてしまう。この時点で彼の愛は独りよがりになっており、相手を思いやる心を失っていた。その後、ダークサイドに落ちてからはやることがエスカレートしていて、明確な悪意でもってメリー・ジェーンを傷つけている。彼女が働くジャズバーに女を連れて行き、驚異的な身体能力でハッスルしたのだ。このシーンはなかなか見応えがあって、嫌がらせもここまで来ると救いようがない。ピーターの特性とはこういうものなのかと呆れてしまう。

本作は復讐と許しがテーマになっていて、ここら辺はポスト9.11の問題を忠実になぞっていた。まずピーターはサンドマンに復讐心を抱いている。サンドマンが叔父を殺した真犯人だったから。そして、ハリーはピーターに復讐心を偉大してる。ピーターが愛する父を殺したから。しかし、この2つはどちらも誤解である。サンドマンはピーターの叔父を殺していなかったし、ピーターはハリーの父を殺していなかった。そのせいか許しもスムーズに行われている。なんだ誤解だったのか、と。だが、これが9.11のように本当に被害をもたらしていたらどうなっていただろう? そうあっさり許せるだろうか? 本当の許しは真犯人を許すことで達成されるものである。そこを誤解で済ませてしまうあたり、許しに対して及び腰だと言わざるを得ない。アメリカ人はアルカイダを許さなければならなかったし、ビン・ラディンを許さなければならなかった。しかし、遂にそれは叶わなかった。人を許すことの難しさを痛感する。

このシリーズは能天気なヒーローものかと思いきや、けっこうほろ苦い結末を迎えていて意外だった。終わってみればハリーがあまりに不憫である。