海外文学読書録

書評と感想

ジョン・スタージェス『墓石と決闘』(1967/米)

★★★

OK牧場の決闘でワイアット・アープ(ジェームズ・ガーナー)とドク・ホリデイ(ジェイソン・ロバーズ)ら4人はクラントン一味に勝利した。ところが、アイク・クラントン(ロバート・ライアン)は手下と共に逃げ延びている。裁判を受けるワイアット・アープ。その後、クラントン一味の残党によってワイアット・アープの身内が襲撃され、兄は半身不随、弟は殺害されてしまう。

OK牧場の決闘に後日談があったなんて知らなかった。史実準拠という触れ込みだが、Wikipediaアイク・クラントンの頁を見るとだいぶ違う。アイク・クラントンを殺害したのはワイアット・アープではなく、ピンカートンの探偵のようだ。そもそもワイアット・アープの復讐は、フランク・スティルウェル(ロバート・フィリップス)の殺害で終わっていた。まあ、史実通りだったら100分もたないので、脚色を加えたことはけっこうなことである。でも、それだったら史実準拠という触れ込みはやめてほしかった。

西部劇のヒーローは法の遵守に拘る。敵を倒すときも相手からの攻撃を待ってカウンターで仕留めている。それなら正当防衛で済むから。殺人罪に問われることもない。本作の面白いところは、ワイアット・アープが法の遵守という建前を用いながら復讐を進めているところだろう。彼は連邦保安官の資格を得て敵を追跡している。逮捕が名目であるが、実際は敵に攻撃させてカウンターで討ち取る戦術をとっている。こういうことができるのも彼が早撃ち名人だからで、その超人的な腕前はいかにも西部劇ヒーローだ。こういったアクションはすべてファンタジーである。しかし、我々は西部劇のガンマンに夢を見ていたい(幕末の剣客に夢を見るように)。1、2、3とカウントして早撃ちで敵を倒す。敵には2の段階で銃を抜かせ、自分は3の段階で抜く。それでも余裕で射殺する。銃とは一撃必殺の武器であり、こういった名人芸こそが西部劇に華を添えるのである。

法的な正当性に拘るのは敵も同様で、クラントン一味の中にも保安官がいる。向こうは向こうでワイアット・アープを逮捕しようとしていた。ワイアット・アープが連邦保安官で、クラントン一味は町の保安官である。両者の争いは実質的には私闘だけど、そこを法で糊塗するところが可笑しい。彼らは保安官という地位を利用した殺し合いをしており、そのことはドク・ホリデイも気づいている。ドク・ホリデイはワイアット・アープを非難するのだった。後にワイアット・アープは「すべて復讐だった」と認めている。「正義」を看板にしないあたりは潔い。

印象的なシーン。ワイアット・アープが駅馬車の駅で強盗を追い詰める。強盗のカバンを検めて現金を確認する。強盗がライフルで撃ってくる。それを壁に隠れてやり過ごす。壁から出て拳銃で射殺する。一連の流れはとても鮮やかだった。早撃ちもいいがこういうのも悪くない。これぞ西部劇アクションである。