海外文学読書録

書評と感想

村川透『処刑遊戯』(1979/日)

★★

廃屋に監禁された鳴海(松田優作)が、特務機関のボス・藤田(山本麟一)のテストに合格し、組織の秘密を知りすぎた殺し屋・岡島(青木義朗)を消すよう命じられる。鳴海は行きつけのバーでピアニストの直子(りりィ)と出会っており、その女を返してもらうためには命令に従う必要があった。岡島を狙撃する鳴海だったが……。

『殺人遊戯』の続編。

このシリーズは音楽が『ルパン三世』【Amazon】の大野雄二なので、前2作ともどこかそういう雰囲気があったが、本作はハードボイルド要素がいつもより強いせいか、もろに実写版ルパン三世みたいになっていた。

とはいえ、ルパン三世みたいな洒脱さはなく、全体的に格好つけている。そのシリアスな佇まいは、まさに勘違いハードボイルドといったところだ。前2作はアクセントをつけるためにコメディ要素を入れていたけれど、本作にはそれがないので画面に横溢するすかした雰囲気がきつかった。

『カサブランカ』みたいな歯の浮くセリフがあったのは良かったかもしれない。「どこかで会ったかな」「産まれる前に一度」「物覚えがいいんだねえ」というやりとりは、並の脚本家には書けないだろう。また、鳴海が直子に対し、「同じ女を二度抱くほど暇じゃない」と真顔で言い放っていて、見ているほうとしては脳みそが沸騰しそうだった。

鳴海が敵のアジトに単身乗り込み、多数を虐殺するのはお約束だろう。時代劇には殺陣がある。このシリーズのガンアクションもそれと同じだ。殺る側と殺られる側、双方の息がぴったり合っているからこそ、あのような無理ゲーが成立する。個人的には、殺られる側の職人芸に拍手を送りたい気分だ。

本作には少しだけカーチェイスが出てくる。これがハリウッド映画と比べてあまりにしょぼいので唖然とした。たぶん日本の道路はカーチェイスに向いてないのだろう。行政も大して協力してくれなさそうだし。本作を観て逆説的にハリウッドの偉大さを思い知った。ああいう映像はもはや文化の問題である。

りりィの気だるい雰囲気は、いかにも情婦といった感じで本作にマッチしている。ベッドでのピロートークが似合いそうだった。古き良き昭和の水商売女といった風情である。一方、主演の松田優作木村拓哉を彷彿とさせる演技で、キムタクが松田優作を手本にしてドラマの役作りをしていたことが分かった。

松田優作って今では伝説の俳優だけど、けっこう駄作にも出てるみたいだ。