海外文学読書録

書評と感想

村川透『殺人遊戯』(1978/日)

★★

5年前に頭山会会長を殺害した鳴海(松田優作)は、目撃者である秘書の美沙子(中島ゆたか)を殺さずに見逃した。5年後、海外から帰ってきた鳴海は、舎弟の文太(阿藤海)と借金取り立て業をする。そして、美沙子と再会。彼女は暴力団会長・勝田(佐藤慶)の愛人に収まりつつ、クラブのママをしていた。鳴海は勝田に呼び出され、敵対する暴力団の組長を殺害するよう依頼される。

『最も危険な遊戯』の続編。

対立する暴力団の間に立つところは『赤い収穫』【Amazon】っぽいけれど、結局は鳴海が一人でどちらも潰してるので、おいしいところ総取りといった感じだった。権謀術数を巡らせるのではなく、力でねじ伏せるところはこのシリーズらしい。本作を観て、スター映画の何たるかを思い知った。

本作はもう1作目ほどのインパクトはなくて、見所といったら、鳴海がやくざの本拠地に乗り込んで組員どもを虐殺するシーンくらい。それが2回ある。どちらも華麗なガンアクションを繰り広げていて、低予算っぽいチープな作りでありながらも、それなりに見せる場面になっていた。ハリウッド映画に比べると、カメラワークが工夫されてるかもしれない。画面の奥で小忙しく動いているところは新鮮味があった。また、ドア越しの敵を銃で撃ち抜くところも本作の特徴で、これでもかと多用している。総じて素人くさいガンアクションが面白かった。

負傷した鳴海を女が看病するという構図は本作でも健在で、ここまで来るとバカのひとつ覚えだろう。今回の相手は色気ムンムンの熟女である。その後、鳴海は女を張り飛ばして胸を揉み、濃厚なベッドシーンになだれ込むのだけど、さすがにこの流れは古すぎてきつい。女は殴っとけばいいだろうみたいなジェンダー観は、女体をモノ化してる感じがあって受け入れ難いのである。まあ、暴力的な男はモテるらしいから、たぶん実社会の事情を反映してるのだろう。この社会では、やさしい男よりも殴る男のほうに需要がある。男女関係とはつくづく難しいものだと痛感した。

舎弟を演じる阿藤海がクソうざくて、「鳴海さーん、鳴海さーん」と叫んでいるところは普通に殺意が湧いた。阿藤海のことはよく知らないけど*1、本作を見る限りでは、勢いだけで演技をしている大根役者である。もう少し何とかならないものかと思った。

*1:子供の頃にバラエティ番組で見た記憶がある。そのときは阿藤快に改名していて、芸人によくイジられていた。