海外文学読書録

書評と感想

クリストファー・マッカリー『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018/米)

★★★

前作でソロモン・レーン(ショーン・ハリス)を逮捕したものの、シンジゲートの残党はアポストル(神の使徒)と名乗って非合法活動を続けていた。IMFのイーサン・ハント(トム・クルーズ)が敵の手にプルトニウムが渡らないようギャングから先に購入しようとする。ところが、その任務に失敗。CIA長官(アンジェラ・バセット)はオーガスト・ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)をイーサンのお目付け役に据え、チームはプルトニウム奪還のミッションに挑む。

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の続編。

最近のアクション映画にいまいち心が踊らないのは、CGやカメラワークでいくらでも誤魔化しが効くからと悟ったからだった。高高度から飛び降りて酸素トラブルになるシーンとか、車とバイクによるカーチェイスとか、やってることはすごいのだけど、どうせ撮影上のトリックがあるのだろうと勘繰ってしまう。画面に起きていることは、実際には起きてないことなのだ、みたいな感じ。映画とは、そういった詐術を虚心坦懐に楽しむべきものであることは重々承知している。けれども、今や画面上で何が起きても、昔のような驚きを感じなくなっていることも確かだ。高度に発達した映像技術は、映画から本物のスリルを奪っているような気がする。

トム・クルーズが自分の足で走っているシーンが一番見応えがあった。車やバイクよりも自分の足。たぶん、走り方がいいのだろう。必死に走っているのが伝わってくる。さらに、ナイトクラブのトイレで繰り広げられる東洋人との格闘シーンもピカイチだ。敵がめちゃくちゃ強いのが良かった。イーサン・ハントとオーガスト・ウォーカー、この2人を相手に互角以上の戦いを演じている。やはり東洋人はクンフーの腕前が段違いなのだ。3人掛かりでようやく仕留めているのだから強すぎである。

終盤の舞台になったカシミールのロケーションが素晴らしい。こういうのはさすがハリウッドだと思う。美しい風景を綺麗な映像で見せる。言葉にすると容易だけど、アジア映画やヨーロッパ映画ではこういう風景を見たことがないので、やはりある程度の金とノウハウが必要なのだろう。雪山を背景にヘリで追いかけっこするシーンは、まさに映画のクライマックスという感じだった。

ところで、このシリーズはアメリカ同時多発テロ事件の影響を相当受けていると思う。現実のテロは未然に防ぐことができなかったけれど、フィクションのテロはきっちり防いで大団円を迎えている。テロの規模も世界レベルにスケールアップし、使う武器も核兵器だ。そして、アメリカ人が世界の危機を救うのである。こういう願望充足的な動機が何だか可愛らしい。