海外文学読書録

書評と感想

クリストファー・ノーラン『ダークナイト ライジング』(2012/米=英)

★★

ゴッサム・シティ。地方検事ハービー・デントの死から8年が経ち、街はデント法によって犯罪が撲滅していた。バットマンことブルース・ウェインクリスチャン・ベール)は、本業からもヒーロー活動からも引退し、屋敷でひきこもり生活を送っている。そこへキャットウーマンアン・ハサウェイ)が泥棒に入ってくる。さらに、ゴッサム・シティにマスクをつけた筋肉男ベイン(トム・ハーディ)が出現、犯罪組織を率いて街の支配に乗り出す。

『ダークナイト』の続編。

3作目まで観てようやく気づいたけれど、このダークナイト・トリロジーって、バットマンを現代のハリウッド映画の文脈に組み込んだらどうなるのか? という実験的な試みなのかもしれない。というのも、本作は主人公がバットマンなだけで、中身は普通のアクション大作だったのだ。これだったら主人公はイーサン・ハント(トム・クルーズ)でもランボーアーノルド・シュワルツェネッガー)でも良かった。本作に限っては、ほとんどバットマンである必然性がない。

影の同盟を3作目まで引っ張ったところが敗因だろう。悪役のベインにまったく魅力がない。『バットマン ビギンズ』はあれでまだ目新しかったけれど、似たようなことを今更やられても退屈なだけである。正直、同じことを繰り返すくらいなら大人しくペンギンを出しておけよと思った。『ダークナイト』が良かったのはジョーカーが無軌道な悪党だったからで、本作みたいに信念を持った悪党は最初の1回でお腹いっぱいである。せめて街を破壊する動機くらいは変えてほしかった。こうなったのもシリーズ全体の整合性を取ろうとした結果なので、最初に枠組みを決めるのは良くないと思った。

復活したバットマンが、「マスクは大事な人を守るため」と開き直ったのにはぶったまげた。これじゃあ、中東でテロ活動してるジハード戦士と変わらないじゃないか。そして中東と言えば、劇中に出てくる地獄穴がもろにイスラムの世界観だったのには苦笑した。やはりアメリカにとってイスラムとはそういう存在なのだろう。バットマンを現代のハリウッド映画の文脈に組み込んだらどうなるか。それがこの有り様である。

核融合炉が未来のエネルギーとされているのは、さすがに時代錯誤だと思う。ハイテクがてんこ盛りのシリーズなのにまだその段階かよ、みたいな。そして、核爆弾を使って街を破壊するプランがあまりに陳腐で、もう少し捻りをくわえてほしかった。これでは普通のアクション大作ではないか。バットマンである必然性がない。

ゴッサム・シティの危機に政府が介入できず、最終的には地元の人たちで問題を解決する。アメリカが地方分権の国であることを思い知らされた。