海外文学読書録

書評と感想

ブラッド・バード『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011/米)

★★★

IMFのエージェントが、女暗殺者サビーヌ・モロー(レア・セドゥ)に殺され秘密ファイルを奪われる。それは「コバルト」という人物に渡されるはずのものだった。IMFはモスクワの刑務所に入っていたイーサン・ハント(トム・クルーズ)を脱獄させ、「コバルト」の正体を探るべくクレムリンに潜入させる。ところが、クレムリンは何者かに爆破され、イーサンはテロの首謀者にされてしまう。

『ミッション:インポッシブル3』の続編。

基本的には余計なドラマがなくて退屈しなかったし、途中までは傑作だろうと思っていた。冒頭の脱獄が面白ければ、その次のクレムリン潜入もスリリング。ドバイのブルジュ・ハリファでの作戦に至っては、スパイ映画の最高峰といった感じのミッションを見せてくれる。しかし、面白かったのはここまでで、舞台がインドへ移ってからは退屈極まりない。ミッションには魅力がないし、クライマックスになるはずの戦闘(立体駐車場での格闘戦)は迫力不足で盛り上がらなかった。全体的にピークの置き場を間違えているような感じである。

ブルジュ・ハリファではイーサンがビルの外壁を登ったり降りたりするシーンがあって、これは2作目のロッククライミングに匹敵するくらい見応えがあった。今回は吸着式の科学手袋を使って登っている。たいていの人間は高い場所に恐怖心を抱いているので、このアクションは命の危険に伴うスリルが味わえる。舞台になっているのが世界屈指の超高層ビルなので壮観だった。

ブルジュ・ハリファの内側では、入れ替わりトリックを使って2つの取り引きが同時進行する。同じ建物の上と下で、敵との静かなやりとりが行われる。この部分は派手なアクションシーンではないものの、いかにして相手を騙すかという緊張感があった。特に報酬のダイヤモンドをめぐる動きは巧妙だったと思う。

対人戦の特徴としては格闘戦が多く、銃撃戦は控えめだった。ヒーロー側が持っている武器はだいたいが拳銃である。他のシリーズ作品みたいにマシンガンを連射することはついぞなかった。ひょっとしたらこれはリアリズム路線なのかもしれない。スパイは目立った動きをせず、チームを組んでこっそりミッションに臨む、みたいな。本作は派手なスタンドプレイよりも、チームワークによる地味なミッションが重視されていた。

ところで、登場人物がやたらと落下するところは監督の拘りなのだろうか。それと、女暗殺者役のレア・セドゥがとんでもない美人で目を引いた。これは他の出演作もチェックせねばなるまい。