海外文学読書録

書評と感想

野村芳太郎『震える舌』(1980/日)

★★★

就学前の少女・三好昌子(若命真裕子)が、マンションの近くで泥んこ遊びをして手から出血した。それから間もなく、口が開けなくなったり、歩き方がおかしくなったりする。昌子の父・昭(渡瀬恒彦)と母・邦江(十朱幸代)は、救急車を呼んで娘を病院に運ぶ。やがて大学病院で破傷風と診断されて入院、両親は病室で看病する。

原作は三木卓の同名小説【Amazon】。

医療ドラマとホラーサスペンスは隣接したジャンルなのかもしれない。たとえば、パンデミックを扱った映画なんてもろに後者だ。本作の場合はホラー風味が強くて、少女が痙攣して海老反りになったり、舌を噛み切って血だらけになったりする様子は『エクソシスト』【Amazon】を連想させる。ウィルスや細菌は目に見えないから怖い。そして、それらが引き起こす症状は見る者にインパクトを与える。医療ドラマもホラーサスペンスも今まで避けていたジャンルなので参考になった。

破傷風と診断されるまでの紆余曲折も、振り返ってみればホラーだった。小さい病院では原因が分からないし、大学病院でも当直の医師が心因性と診断している。破傷風と分かったのは教授の診察によってである。実は似たような経験は僕もしたことがあって、若い頃、ある身体症状が出てドクターショッピングをした挙げ句、最終的には大病院で命に関わる病気であることが発覚した。そのときは発見の遅れにより、助かる確率は6割だと言われた。3ヶ月入院して、退院後は1年間通院、何とか完全寛解して現在に至っている。そのとき僕は痛感したのだった。医者って実は無能な奴ばかりなのだ、と。病気の診断すらろくにできない。それ以来、僕は医者に対する敬意を失っている。

破傷風って小さい頃に三種混合ワクチンを接種するから、現代人は罹らないだろうと高をくくっていた。けれども、1975年から1981年までワクチン接種が中止されていたようだし、さらに1967年以前に生まれた人もワクチンを接種してないらしい。そういえば、風疹も予防接種してない世代がいるようで、最近になって政府が重い腰をあげて公費負担による接種を促しているのだった。戦後になっても生まれた年によってこのような制限があるのだから、我々の社会は欠陥だらけだと思う。

子役の若命真裕子は見た感じ4~5歳くらいなのに、迫真の演技をしていて驚いた。医療行為の場面では相当無理な体勢を強いられていて、演じるのもつらかったと思う。一方、渡瀬恒彦と十朱幸代は段々と焦燥していくところが印象的だった。過労になると心身ともにダメージを受ける。その様子を好演してた。