海外文学読書録

書評と感想

『仮面ライダーギーツ』(2022-2023)

★★★

浮世英寿/仮面ライダーギーツ(簡秀吉)、桜井景和/仮面ライダータイクーン(佐藤瑠雅)、鞍馬祢音/仮面ライダーナーゴ(星乃夢奈)、吾妻道長仮面ライダーバッファ(杢代和人)らが、デザイアグランプリと呼ばれるデスゲームに参加する。優勝すると何でも願いが叶えられるのだった。

全49話。

デスゲーム自体はそんなに面白くないのだが、人物の役割を変転させたり、ゲームの構造をひっくり返したり、飽きさせないような工夫は見られた。段々と世界の謎を明かしていくところも面白ポイントである。桜井景和、鞍馬祢音、吾妻道長は闇堕ちやら何やら浮き沈みがあったが、そのおかげでドラマに多層性が出ていた。そして、浮世英寿はぶっちぎりの主人公で一本筋が通っている。最後は神にまでなるのだから驚きだ。英寿は境遇が特殊だからこうなるのも必然とはいえ、それにしても最初から最後まで強い主人公だった。他のライダーとは別格である。

世界に存在する幸福の総量が決まっていて、誰かの願いを叶えるとその大きさに応じて他の人たちが不幸になる。そのシビアさには痺れた。しかも、運営はそのことを参加者に伝えていない。事後的に明らかになるのである。他にもゲーム中に敵にやられた場合は存在を抹消されてしまう。つまり、死んでしまう。そのことも運営は後になって教えている。ゲームのルールを最初からオープンにしないところは『魔法少女まどか☆マギカ』のキュウべぇみたいだ。実際、本作は『まどマギ』の影響を受けている節があって、英寿が神になるのもまどかが概念になるのと対応しているのだろう。その昔、虚淵玄仮面ライダーの脚本を書いたことがあったから、その流れを汲んでいるのかもしれない。本作でも創生の女神が何でも願いを叶えてくれるわけで、まさに「奇跡も、魔法も、あるんだよ」である。

オーディエンスの罪深さを暴いているところが良かった。未来人の彼らはゲームの様子をリアリティーショーとして楽しんでいるのである。その際、何人かは実体化してこの世界に現れ、贔屓のライダーを「推し」にしてサポートしてくるのだった。命懸けのゲームにそのような推し活を持ち込んでくるところはグロテスクである。本作のライダーたちは古代ローマの剣闘士みたいなもので、命の煌きを見世物にされている。途中からはバッドエンドを望むオーディエンスが出てきて、運営にもバッドエンド請負人が出てくる。そういった他人の不幸を望むところもオーディエンスの罪深さで、それはつまり、我々の罪深さを表している。リアリティーショーを消費するというのは、たとえば、SNSで他人の人生をコンテンツとして消費するのと変わらない。安全圏から他人がもがく様を楽しんでいるのだ。「他人の不幸は蜜の味」とはよく言ったもので、我々も対象が不幸になると嬉しい。不思議なことにまったく関わりのない相手に対してそう思う。我々の罪深さときたらちょっと理性では推し量れないくらいだ。本作はそのことを露悪的に暴いたところが良かった。

それにしても、特撮に出てくる俳優って美男美女ばかりでびっくりする。しかも、みんな若い。なかでもベロバ役の並木彩華が16歳だと知ったときは腰を抜かした。他にも女性陣はファッションモデルやグラビアモデルが多くて、顔がいいのはそうことかと納得した。彼らが今後活躍することを願うばかりである。