東南アジアの犯罪都市ロアナプラ。サラリーマンの岡島緑郎(浪川大輔)がひょんなことから運び屋のラグーン商会と関わる。ラグーン商会は黒人のダッチ(磯部勉)がボスで、中国系ガンマンのレヴィ(豊口めぐみ)、ユダヤ人ハッカーのベニー(平田広明)の3人で構成されていた。岡島緑郎はここではロックと呼ばれ、色々あってラグーン商会の一員になる。
原作は広江礼威の同名漫画【Amazon】。
全3期29話。1期と2期がテレビシリーズで3期はOVAである。
当初はアウトローの描写が洒落臭く、こりゃアメリカのナードが好みそうだと鼻白んだが、慣れるとアクションシーンが爽快で病みつきになる。とにかく銃の乱射や刀剣での殺傷が激しく、夥しい血が流れるのだ。ここまで人がバタバタ死んでいくアニメも珍しいのではないか。同時期にはグロアニメの『エルフェンリート』も放送されていたし、ゼロ年代のアニメシーンは意外と尖っていたのかもしれない。
総じてラグーン商会の面々よりも脇役たちのほうがキャラが濃く、どちらかというと、彼らが前面に出ているエピソードのほうが面白かった。
たとえば、ロシアンマフィアのホテル・モスクワはバラライカ(小山茉美)という傷だらけの女頭目が率いている。ホテル・モスクワの前身はアフガンで戦っていた旧ソ連軍の小隊で、第三次世界大戦を戦うために訓練された武装集団だった。バラライカはそこの元大尉である。このバラライカが出張ってくる回はだいたい面白く、組織的かつ圧倒的な殺戮を堪能できる。特にヘンゼルとグレーテルというイカれた双子と戦う回が絶品で、子供相手にも手加減しないその無慈悲さに痺れた。よくこれで放送コードに引っ掛からなかったものである。下手したら社会問題になりかねない描写だった。
フェミニストアニメとしても注目すべきだろう。ガンマンのレヴィを始め、元軍人のバラライカ、殺人メイドのロベルタ(富沢美智恵)など、出てくる女たちがとにかく強い。戦闘力だけならどの男性キャラクターも敵わないレベルに達している。か弱い女など一人も出てこないのが本作の特徴だ。最近流行りの『呪術廻戦』【Amazon】よりもよっぽどフェミニスト度が高いと言えるだろう。いわゆる「戦闘少女」とは一味違う生々しさが彼女たちには宿っていて、血と暴力の世界を先頭に立って牽引している。
また、メイドや尼僧、子供など、暴力とは縁がなさそうな属性に暴力をやらせるところも本作の肝だ。そういう絵面をクールなものとしてオーディエンスに差し出している。全体的にアメリカのナードが好みそうな漫画っぽい想像力に溢れているのだ。この辺に作り手のフェティシズムを感じた。
なお、監督の片渕須直は後に『この世界の片隅に』の監督も務め、数々の映画賞を受賞している。本作と作風がまったく違っていて驚かされる。