海外文学読書録

書評と感想

かきふらい『けいおん!』(2008-2012)

★★★

桜が丘高校軽音部は部員がいなくて廃部寸前だった。そこに4人の新入生――平沢唯(ギター)、秋山澪(ベース)、田井中律(ドラム)、琴吹紬(キーボード)――が入部する。顧問に音楽教師の山中さわ子を迎え、1年間活動。2年次には新入生の中野梓(ギター)が入部する。

全6巻。

原作は原作でそこそこ面白かったが、やはりアニメ版【Amazon】は神がかっていたと思う。おたく向けの地味な4コマ漫画を、高品質な作画とキャッチーな音楽、個性豊かな声優を駆使して立体化した功績は大きい。京アニと山田尚子はこの作品によって歴史に名を刻んだ。

きららフォーマットは4コマが基本なので、ストーリー漫画によくあるような迫力のあるコマ割りができない。だから本作は音楽を扱っているにもかかわらず、音楽の臨場感を表現できないでいる。むしろ、そういうのは無理だと端から割り切ってさえいる。この態度は潔いと言えるだろう。音楽描写を放棄した代わりに焦点を当てているのが女子高生の日常で、本作は可愛い女の子がただ可愛いことをする学園漫画になっている。定期考査だったり、夏合宿だったり、あるいは部活動の一コマだったりを、軽音部の面々がキャッキャウフフしながらこなしていくのだ。そこには煌めく青春の追認のようなものがあり、高校時代の3年間がかけがえのない宝物のように思える。もちろん、これは現実からだいぶかけ離れているのだろう。しかし男の僕にとっては、女子校にならこういう桃源郷が存在するのかもと納得してしまう。

エンターテイメントはキャラクターが命で、その点で言えば本作はトップクラスに位置する(アニメ補正があるとはいえ)。劇的なストーリーがない代わりに、キャラ同士が楽しい掛け合いを見せてくれる。個人的には、中野梓(あずにゃん)がお気に入りだ。彼女にはしっかりした面と天然の面が同居しており、可愛い後輩として、あるいはイジられキャラとして、先輩たちから目をかけられている。軽音部が海辺に夏合宿に行った際、遊んでいる先輩たちを諭しつつ、自身が日焼けするまで楽しんでいるところなんか最高ではないか。『ゆるゆり』【Amazon】の吉川ちなつにせよ、『宇崎ちゃんは遊びたい!』【Amazon】の宇崎ちゃんにせよ、後輩キャラにはおたくの琴線に触れる何かがある。

この手の日常漫画はだらだら続くことが多いが、わずか4巻でメインキャラたちを卒業させて幕を引いたのは潔かった。あずにゃんとの別れもそれなりに感動的とはいえ、アニメに比べるとあっさりしている。しかし、続編の2巻(高校編【Amazon】と大学編【Amazon】)は完全に蛇足で、アニメがヒットしたから無理やり書かされた感がありありだった。なまじっか売れてしまうと、大人の事情で綺麗に終わらせてくれないから難しいところだ。

漫画は漫画でそこそこ面白いが、やはりアニメ作品こそが至高。そういう作品である。