海外文学読書録

書評と感想

マーティン・スコセッシ『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013/米)

★★★

野心満々でウォール街投資銀行に入社したジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)だったが、株式仲介人として力を発揮する前にブラックマンデーで銀行が倒産する。その後、紆余曲折を経て自分で投資会社を立ち上げて荒稼ぎし、セックスとドラッグに満ち溢れた日々を送る。やがてFBIに目をつけられ……。

原作はジョーダン・ベルフォートの回想録【Amazon】。

これを観ると、かつて一世を風靡した堀江貴文村上世彰は小物なんだと思う。ベルフォートは稼いでる額も桁違いだし、仲間内で派手に乱脈の限りを尽くしていて、拝金主義者としての格が違いすぎる。ここまで強欲な人間はアメリカにしかいないのではないか。しかもその欲望が、高級車やクルーズ船といった分かりやすい物欲だったり、セックスとドラッグによって快楽を得ることだったり、妙に薄っぺらいところが笑える。僕がTwitterで観測している人物に、元証券マンで薬物依存症の精神障害者がいる。彼はこの映画がお気に入りらしい。今は何をしているのかというと、生活保護を受けつつ、ブロンをODしては仮初の快楽に浸っている。なるほど、確かに彼の好きそうな映画だ。普段から言動が薄っぺらいし、頻繁に自撮りをアップしてはフォロワーとエンカして陽キャをアピールしている。彼は本作みたいな明るく退廃した生活に憧れているのだろう。金とセックスとドラッグに塗れた人生。こういう映画が駄目人間のロールモデルになっているのは罪深いことである。

ラカンによると、欲求は満足できるのに対し、欲望は決して満足しないのだという。本作を観ていたら、それも一理あるなと納得した。ベルフォートと愉快な仲間たちは、生きていくには十分な額を既に稼いでいるのに、欲望に歯止めが効かない。そのまま破滅への道を突っ走っている。僕だったらある程度稼いだら引退して、読書や映画三昧の日々を送るだろう。金で買える最大の商品は時間であり、その時間でやりたいことをやるのが幸せだと思うのだ。しかし、本作の登場人物はそういう哲学を持ち合わせていないようで、ひたすら欲望と快楽を追求している。結局のところ、多くのものを得るのは強欲な人間であり、また多くのものを失うのも強欲な人間なのだ。僕みたいにほどほどの欲望しか持ってない人間は、得るものも失うものもほどほどなので、大きな成功もしない代わりに大きな失敗もしないのである。これはこれでちょっと寂しいような気がした。

本作のMVPは、ベルフォートの上司を演じたマシュー・マコノヒー。その変人ぶりが堂に入っていた。また、金融業界が体育会系気質なのは日本もアメリカも同じようで、社員をマイクで鼓舞するシーンは某証券会社を思い出した。きっと社内で乱痴気騒ぎもしていることだろう。こういう連中とは関わりたくないと思った。