海外文学読書録

書評と感想

ジョン・ファヴロー『アイアンマン』(2008/米)

★★

天才発明家のトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)は、軍需産業の大企業でCEOを務めていた。彼は新型兵器のプレゼンテーションのためにアフガニスタンへ。そこで武装勢力に拘束され、傷の治療のために胸に電磁石を取り付けられる。現地でパワードスーツを作って脱出したトニーは、帰国後にそれを改良したものを開発。自ら装備してヒーロー活動を行う。

前半の舞台がアフガニスタンだったから、またアメリカの「正義」を外国に押しつける映画かよ、と思って少々うんざりしながら観ていた。敵がイスラム系で、例によって彼らを「殺人集団」みたいに扱っている。僕はアメリカ人じゃないので、こういう能天気な図式にはちょっと乗れない。冷戦時代から、アメリカは世界を悪くしている元凶のひとつだと思っている。昔はアメリカとソ連、今はアメリカと中国。世界はいつだって大国のエゴに翻弄されてきた。と、そういう背景を意識しているため、アメリカの「正義」を執行するヒーローには反感を抱く。お前らは国内の犯罪者でも懲らしめてろと思う。アメリカのヒーロー様は国際社会に出張らず、国内で自己完結してほしいというのが本音だ。

とまあ、そう思いながら観ていたら、後半になって黒幕が同じアメリカ人だと判明。彼と国内で決着をつけることになったので、前述の懸念はいくぶん緩和された。落としどころとしては悪くないと思う。黒幕が私利私欲で行動する典型的な悪人であるところもいい。こういう対立軸だったら、エンターテイメントとして屈託なく消費することができる。だいたい娯楽映画なのに変に国際情勢を持ち出すからややこしくなるのだ。世界の警察を気取ったヒーローなんてクソ食らえである。

本作のポイントは、主人公がテクノロジーの力でヒーローになるところだろう。人類の叡智によって作られた、やたらとメカメカしいヒーロー。20世紀の『ロボコップ』【Amazon】からここまでアップデートされた*1。ホットロッド風の色彩に染められたパワードスーツがまた格好良くて、超合金のおもちゃを手元に置いておきたいくらいである。やはりヒーローはビジュアルが何よりも重要だ。

ところで、序盤のテロリストは監視カメラでトニーの行動をチェックしていたのに、まんまとパワードスーツを作らせてるのって相当マヌケでは? あと、アメリカの歴史において原爆の成功体験は罪深いと思った。これのせいで、「強力な兵器が平和を生む」なんて傲慢な考えを抱かせている。敗戦国の人間としては許しがたい。

*1:ただし、『アイアンマン』の原作は1968年発表である。