海外文学読書録

書評と感想

ブライアン・シンガー『ボヘミアン・ラプソディ』(2018/英=米)

★★

クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーラミ・マレック)の伝記映画。当時「スマイル」というバンドを組んでいたブライアン・メイ(グウィリム・リー)とロジャー・テイラーベン・ハーディ)が、脱退したボーカルの穴埋めにフレディを迎え入れる。さらに、ベースのジョン・ディーコン(ジョゼフ・マゼロ)を新たに加え、バンドは「クイーン」と改名するのだった。クイーンは順調に成功の階段を登っていくも、フレディと他のメンバーとの間に溝ができていく。

これは微妙かな。中途半端にヒューマン・ドラマをやらず、音楽面に振り切りってほしかった。楽曲は言わずもがな、ライブシーンも物真似とは思えないほど素晴らしかったし。終盤のライヴ・エイドなんて圧倒的ではないか。とはいえ、娯楽映画という体裁をとる以上、感動ものにしなければならないという制約があるのだろう。何と言っても、フレディ・マーキュリーの人生は劇的だから。人間関係、同性愛、エイズ。感動できる要素はたくさんある。

でもなあ、何か安いんだよなあ。どこまでが事実でどこからが虚構かは分からないけれど、実際にあったエピソードを映像でやると途端に安くなってしまう。感動もののテンプレに収まるというか。正直、こういうのは映画でやらなくていいよって思う。これを観て「感動した」とか言ってる人は、『君の膵臓をたべたい』【Amazon】を馬鹿にする資格なんてないから。そこは肝に銘じておくように。

EMIの重役から「キラー・クイーン」【Amazon】みたいな曲をオーダーされて、それを「二番煎じは作れない」と撥ねつけるシーンが良かった。「繰り返しは時間の無駄」というのは僕の生き方と共通しているから、勝手にシンパシーを感じる。どうせやるなら新しいことに挑戦したい。このブログも3年目に入って映画やアニメについて書くようになったけれど、その動機も「新しいことをやりたい」と思ったからだし。「現状維持では後退するばかりである」というウォルト・ディズニーの名言は、ビジネスにおいてもプライベートにおいても真実だと感じている。きっとクイーンの面々もそうだったのだろう。彼らが重役のオーダーを拒否した結果、「ボヘミアン・ラプソディ」【Amazon】という画期的な曲が生まれたわけで、やはり信念を貫くことは重要である。

フレディと恋人関係になったポール・プレンター*1って、ビートルズにおけるオノ・ヨーコみたいだと思った。つまり、バンドの和をかき乱すサークルクラッシャー。部外者のくせに首を突っ込んでくるから、メンバーから蛇蝎のごとく嫌われている。こういうのってどこでもあるんだなと感心した。まったく人間関係は難しい。

ところで、僕はブルーハーツというバンドが好きなのだけど*2、将来的には彼らの伝記映画も作られないかと妄想した。でも、解散理由がなかなか微妙なので、たぶん実現は不可能だろう。たとえメンバー全員が亡くなったとしても、例の宗教団体は存在してるだろうし。バンドを長く続けるのって難易度が高い。その点、ローリング・ストーンズは偉いと思う。

この映画、ドラマは最低だったけど音楽は最高だったので星2にした。

*1:9年間、フレディの個人マネージャーを務めた。

*2:ハイロウズはそれ以上に好きだし、クロマニヨンズはもっと好きだ。