海外文学読書録

書評と感想

リチャード・リンクレイター『スクール・オブ・ロック』(2003/米)

★★★★

ギタリストのデューイ(ジャック・ブラック)が、ライブ中の行き過ぎたパフォーマンスによってバンドをクビになる。さらに、デューイは友人ネッド(マイク・ホワイト)とその彼女(サラ・シルバーマン)のアパートに居候しており、2人から家賃を請求されるのだった。そんなある時、デューイはネッドにかかってきた教員補充要請の電話を受け、ネッドになりすまして私立学校の臨時教師をすることに。名門ホレス・グリーン学院でロックな授業を行う。

本作はロックを題材にした音楽映画であると同時に、『GTO』【Amazon】を連想させる破天荒な教師ものでもある。物語としては既視感のある内容だったけれど、おっさんが10歳の子供たちとバンドをやる様子が微笑ましくて心が和んだ。最近観た『ボヘミアン・ラプソディ』よりもよっぽどいいと思う。やはり実在の人物を使ってお涙頂戴をやるのは駄目だ。本作みたいな楽しい映画のほうが、創作の姿勢としては圧倒的に正しい。

型破りな教師が持ち前の濃いキャラで子供たちの心を掴み、頭の固い教師や保護者たちと対立しつつ、最後には彼らを感心させる。これは教師もののテンプレと言っていいだろう。日本ではこの手のドラマが散々流行ったと思う。ただ、アメリカではどうだろう? 僕の知る限り、本作くらいしか見かけない。もしかするとテレビドラマだったらたくさんあるのかも。いずれにせよ、かなり熟れた作風だったので、物語としては既視感があった。

才能がないと分かっていてもロックを続けるデューイの姿勢が素晴らしい。彼はもうくたびれた中年である。だけど夢を諦めない。好きも才能のひとつではあるけれども、これはあくまで前提条件であり、職業にするにはそれ以上のものが求められる。その道で食っていくのは大変だ。デューイが抱いているのは無謀な夢である。しかし、せめてフィクションでなら過大な夢を語っていいのではないか。まあ、身近に彼みたいなのがいたら、やめるよう言葉を尽くして説得するけど。

終盤のライブシーンがとても良かった。本作はバンド・バトルというイベントの存在が早い段階で明らかにされ、そこに向かって話は進んでいく。早くバンド・バトルが観たい。デューイと子供たちの晴れ舞台が待ち遠しい。その一心で物語を追いかけていた。おかげで期待値はだいぶ上がったけれど、ライブシーンはそれを凌駕する出来だったので満足度は高かった。素晴らしいロックを披露してくれたと思う。

というわけで、『ボヘミアン・ラプソディ』の数倍は面白かった。