海外文学読書録

書評と感想

デイミアン・チャゼル『セッション』(2014/米)

セッション [Blu-ray]

セッション [Blu-ray]

  • 発売日: 2017/08/02
  • メディア: Blu-ray
 
セッション(字幕版)

セッション(字幕版)

  • 発売日: 2015/10/21
  • メディア: Prime Video
 

★★★★

名門音楽大学の1年生アンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)は、テレンス・フレッチャー教授(J・K・シモンズ)に認められ、彼が指揮する学内バンドの練習に参加することに。そこで罵倒や体罰を含む厳しいシゴキを受けるのだった。アンドリューは偉大なジャズドラマーになる決心を強め、次第にエゴを剥き出しにしていく。

響け!ユーフォニアム』【Amazon】を過激にしたような映画だった。厳格な指導者とそれに食らいつく生徒という図式は、日本もアメリカも好む題材らしい。ただ、『響け!ユーフォニアム』は抑制が効いていてリアリティがあったけれど、本作は情熱が行き過ぎて狂気にまで達していて、そのぶん荒唐無稽に見えた。

ジャズバンドに軍隊式の鬼教官を持ち込む。そこが本作の新しいところだろう。フレッチャー教授は普段は人間味に溢れているものの、ジャズの指導になると途端に人格が変わる。生徒たちに容赦ない罵倒を浴びせ、アンドリューに対しては椅子を投げたりビンタをしたり、常軌を逸したスパルタ教育を施している。その様子はまるで『フルメタル・ジャケット』【Amazon】のハートマン軍曹のよう。生徒たちの人権を全力で蹂躙している。一流のバンドマンを育てるにはここまでしないといけないのかと戦慄した。

ジャズバンドの練習風景は、吹奏楽部の強豪校みたいな印象だった。バンドメンバーはフレッチャー教授の理想とする演奏をしなければならない。テンポや音程を厳しくチェックされ、機械のような正確な演奏を要求されている。しかし、ここで僕は疑問に思う。ジャズってもっと自由なのではないか、と。吹奏楽とは違い、ステージで即興すらするジャンルである。そこはもっと創意工夫を伸ばすような指導が適切なのではないか。本作が周到なのは、そういう疑問が伏線として最後に回収されるところで、なかなかよくできた脚本だと思う。

ラストのドラムソロは圧倒的で、これを見れただけでも元が取れた。ここではアンドリューとフレッチャー、2つの個性が演奏者と指揮者という立場で対立している。しかし、どちらも本番のステージに立っているため、客前で最高のパフォーマンスを発揮しなければならない。それが2人の共通認識としてある。ステージとは自己表現の場であると同時に、客を楽しませる場でもあるのだ。アンドリューの即興演奏は、フレッチャーの管理演奏とは正反対のやり方だけど、最後には両者が止揚して映画は終わる。その終わった瞬間にカタルシスがあって良かった。やはり音楽映画は音楽で語ってなんぼだと思う。

というわけで、『響け!ユーフォニアム』が好きな人は観るべき。