海外文学読書録

書評と感想

ジョン・フォード『荒野の決闘』(1946/米)

★★★★★

1882年。弟たちとカリフォルニアまで牛追いをしていたワイアット・アープ(ヘンリー・フォンダ)は、髭を剃りにトゥームストンの町に寄る。町から外に戻ると、牛が盗まれた挙げ句、末っ子が何者かに殺されていた。ワイアットはトゥームストンの保安官になり、犯人と思しきクライトン一家と対峙する。さらに、ワイアットは酒場で飲んだくれのドク・ホリデイ(ヴィクター・マチュア)と知り合うのだった。折しも町にはクレメンタイン(キャシー・ダウンズ)という美女がやってきて……。

完璧な映画だった。世評の高い『駅馬車』はいまいちその良さが分からなかったけど、本作は最初から最後まで非の打ち所のないショットの連続で圧倒された。黒澤明ジョン・フォードから影響を受けたというのも理解できる。俳優の佇まいからモノクロの渇いた風景まで、観ていて黒澤に似てると思った。文学においてもっとも重要なのが文体だとしたら、映画においては映像がそれに相当するだろう。本作はその文体において他の追随を許さない。これは素晴らしいものを見せてもらった。

酒場でワイアットとドクが邂逅するシーンや、役者がならず者を相手にシェイクスピア劇を演じるシーンなどが印象に残っている。総じて、群衆を俯瞰的に映したカットがいい。ガヤガヤしてるだけなのに不思議と躍動感がある。俳優では主演のヘンリー・フォンダが何をしても様になっているし、クレメインタイン役のキャシー・ダウンズはその高貴な美しさが光っていた。クライトン一家も悪役商会みたいな凄みがある。

原題が「My Darling Clementine(いとしのクレメインタイン)」ということで、男女のドラマを柱にしているところが良かった。すなわち、ドクとクレメインタインとチワワ(リンダ・ダーネル)の三角関係である。クレメインタインはドクを追いかけてくるも、彼はすげなく拒絶する。一方、チワワはドクの情婦に収まっているものの、クレメインタインの存在が気が気でない。本作をワイアットの復讐劇と捉えるなら、この部分は脇筋になるけれども、しかしこれがなかったら本作は単調なアクション活劇になっていただろう。100分間に何を詰め込むのかはホント重要だ。

クライマックスは有名な「OK牧場の決闘」で、これがまたなかなかの盛り上がりだった。対戦カードは、ワイアット・アープと愉快な仲間たちVSクライトン一家。何と言っても、馬車が通り過ぎたあとの砂ぼこりのなかで拳銃を撃ち合うシーンがいい。これぞ西部劇といった感じの満足感がある。

というわけで、本作がジョン・フォードの最高傑作であることに間違いない。非の打ち所のない素晴らしい映画だった。