海外文学読書録

書評と感想

ブライアン・デ・パルマ『スカーフェイス』(1983/米)

★★★

1980年。キューバ難民のトニー・モンタナ(アル・パチーノ)は、人殺しの報酬でグリーンカードを獲得し、まもなく裏社会でコカインの取引に関わるようになる。ボリビアででかい取引をまとめたトニーは、自分を裏切ったボスを殺して麻薬王にのし上がるのだった。彼はボスの愛人だったエルヴィラ(ミシェル・ファイファー)と結婚する。

裏社会におけるアメリカン・ドリームを描いた映画。思ったよりもチープだった。これを観ると、クエンティン・タランティーノブライアン・デ・パルマのファンだというのもよく分かる。何というか、B級映画っぽいテイストがあるのだ。有名俳優を起用しているうえ、おそらく低予算ではないはずなのにB級っぽい。このチープさはいったい何なのだろう、と首を傾げながら観た。

アル・パチーノ演じるトニー・モンタナは、ギャングというよりはチンピラみたいなキャラをしていて、持ち前の自信と度胸で成り上がっている。衝動性が強く、あまり知恵はなさそう。面白いのは、無頼漢のくせに理想の家族像を追い求めているところだ。カタギの母親には親孝行したいと思っているし、妹のことは溺愛している。そして、自身は結婚する前から子供を欲しがっていた。当時はまだボスの愛人だったエルヴィラに対し、「俺の子供を産め」と熱い殺し文句を投げかけている。そして、この極めてまっとうな家族観が、のちに破滅への引き金になるのだから面白い。非情な部分とそうでない部分が入り混じっている。

本作には色々と見所があるけれど、やはり最高なのがトニーの死に様だろう。コカインで痛覚が麻痺しているのか、銃弾を雨あられと浴びても立ったままでいて、身を震わせながら啖呵を切っている。その姿が壮絶だった。さらに、後ろからライフルで撃たれてプールに転落するシーンには、ある種の崇高ささえ感じる。このラストは鮮烈だった。

あとは、コロンビア人が電動ノコギリでトニーの仲間を拷問するところや、トニーがソファーにふんぞり返って葉巻を燻らせるところなどもいい。特に後者は、似合ってるんだかそうでないんだかよく分からない独特の風情がある。いくら格好つけても小柄だからあまり貫禄がないのだ。Wikipediaによると、アル・パチーノの身長は170cmだそうで、外国の映画俳優にしては小さすぎると思う*1。チンピラ役がとてもよくはまっていた。

*1:ちなみに、エルヴィラ役のミシェル・ファイファーは身長171cm。アル・パチーノよりも背が高い。