海外文学読書録

書評と感想

ドン・シーゲル『抜き射ち二挺拳銃』(1952/米)

★★

ゴールドラッシュ時代のカリフォルニア。シルバー・シティ付近では、強盗団が採掘場の権利を次々と強奪していた。早撃ち名人のリュークオーディ・マーフィ)も、父を強盗団に殺されてしまう。仇を討つために町に行った彼は、ひょんなことから保安官のタイロン(スティーブン・マクナリー)によって助手に任命される。タイロンには彼を慕うダスティ(スーザン・キャボット)がおり、また、オパル(フェイス・ドマーグ)という悪女とも出会うのだった。

保安官のタイロンも早撃ちの名人なのだけど、負傷が原因で引き金を引けなくなっしまう。それを補うためにリュークを助手にしたというわけ。主人公に強烈なハンデを負わせるのは、1961年の『荒野のガンマン』サム・ペキンパー監督)にも見られる。ここら辺から「傷」というのが西部劇に入り込んできたのだろう。つまり、完璧だった男性性に傷が入る。そこをどう乗り越えていくのか。タイロンはラストの銃撃戦で、利き腕ではない左手で銃を撃って敵を仕留める。そこはガンマンの面目躍如といったところだけど、しかし、彼はヒロインとは結ばれないのだった。オパルはタイロンを騙す偽のヒロインだったし、タイロンを慕っていたダスティは、最終的にはリュークと結ばれることになる。タイロンは男性性を喪失したままエンディングを迎えているわけで、ここら辺も「傷」の主題と関係ありそうである。

「抜き射ち二挺拳銃」というタイトルのわりには、特に二丁拳銃が売りではなかったのでずっこけた。確かにリュークは腰に二丁、拳銃を吊り下げているのだけど、だからといって一度に両方使うわけではない。そもそも原題は「The Duel at Silver Creek」である。この邦題はあんまりだと思った。

ストーリーは所々破綻していて、たとえば強盗団がリュークの父親を殺した後、帰ってきたリュークを見て逃げ出すのはおかしいと思う。強盗団は7人、リュークは1人である。「目撃者は残さない」が信条なのだったら、その場でリュークも射殺すべきだったのではないか。また、強盗団がメンバーの証としてペンダントを使用しているのも変な話で、そんなことをしたらちょっとのミスで足がついてしまうだろう。他にもご都合主義的な部分があって、どうにも安っぽさが抜けなかった。

リュークが小屋に飛び込んで、前転した後に敵を射殺するシーンが格好良かった。タイロンもリュークも銃を抜くスピードが早く、相当な練習をしていることが窺える。西部劇の俳優って、馬を乗りこなしたり早撃ちを身に着けたりしないといけないから大変だ。