海外文学読書録

書評と感想

ジョン・リー・ハンコック『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2016/米)

★★★

1954年。セールスマンのレイ・クロック(マイケル・キートン)は、ミルクシェイク用のミキサーを売り歩いていた。そんな彼が繁盛しているハンバーガー店を訪れる。店の名前はマクドナルド。ディック(ニック・オファーマン)とマック(ジョン・キャロル・リンチ)の兄弟が経営している店で、店内は著しく効率化されていた。レイは兄弟とフランチャイズの契約を結び、事業拡大の仕事をする。

マクドナルドを世界最大のチェーン店に仕立てたレイ・クロックの伝記映画。これはビジネスマン必見の映画で、ビジネス書を10冊読むよりも、本作を1本観たほうが得られるものは多いと思う。ローカルな店舗を全国にまで拡大するにはどうすればいいのか。精神論と同時に、具体的なノウハウも描かれている。

ビジネスマンのレイは、何よりもマクドナルドという店の名前に目をつけた。これはアメリカ受けする名前だと思ったのだ。クロックでも駄目。なんちゃらバーガーでも駄目。マクドナルドが一番しっくりくる。ビジネスにおいて名前(商号)が重要というのはまったくその通りで、日本でもライブドアが顕著な例だろう。この会社は当初、無料のインターネットサービスプロバイダだった。ところが、ブロードバンド化の波に乗れず、2002年に経営が破綻する。そして、そこへあの有名な堀江貴文が登場。当時オン・ザ・エッヂを経営していた堀江が事業を買い取り、自社の名前をライブドアへと変更している。おそらく堀江はライブドアという名前が欲しかったのだろう。その後、色々な不祥事があって、ライブドアは韓国の会社になったけれど、名前だけは現在も残っている。名前、そうビジネスにおいては名前こそが重要なのだ。自分で名前が思い浮かばないときは、優れた名前の会社を乗っ取ればいい。ビジネスとはかくも非情なものだということを本作は教えてくれる。

フランチャイズの本質が不動産業にあるところは、日本でもコンビニで有名だろう。地方の地主が甘い言葉に騙され、コンビニ本部に土地を分捕られるのはよくある話である。また、日本のテレビ局や新聞社も、本業より不動産業のほうが収益の柱になっている。本作のレイはある人物の助言によって不動産業に舵を切り、結果的にはマクドナルドを乗っ取ることに成功した。マクドナルドは名実ともにレイの会社になったのだ。大金を手にするカラクリは僕みたいな凡人には見通せないので、本作を観て多少は勉強になった。

この映画は創業者のマクドナルド兄弟からしたら理不尽な話ではあるけれど、しかし人生ってそんなものだよねえって思うわけだ。本作はレイを主人公にしているから、マクドナルド兄弟の、特に弟の保守性が失敗の原因ではないかと思ってしまう。もっと柔軟に対処していれば、違った結末になっていたのではないか。ともあれ、本作みたいに羊が狼に食べられる話って、僕にとっても他人事ではないから大変だ。ビジネスって生き馬の目を抜く世界だから残酷である。