海外文学読書録

書評と感想

いしづかあつこ『ハナヤマタ』(2014)

★★

中学2年生の関谷なる(上田麗奈)は自分の平凡さにコンプレックスを抱いていた。そんな彼女が金髪の少女ハナ・N・フォンテーンスタンド(田中美海)と出会う。ハナはアメリカから来た転校生だった。なるはハナに誘われてよさこいをすることに。その後、なるの幼馴染の笹目ヤヤ(奥野香耶)と西御門多美(大坪由佳)、さらに生徒会長の常盤真智(沼倉愛美)を加え、よさこい部として大会に参加するのだった。

原作は浜弓場双の同名漫画【Amazon】。

きららアニメのわりにシリアスに寄せていて驚いた。しかも、ストーリー性が高くてとても4コマ漫画が原作とは思えない。先日観た『こみっくがーるず』とは対称的な構成だった。

大会のために仲間を集めていくところは『ラブライブ!』【Amazon】っぽいけれど、実は本作の原作のほうが『ラブライブ!』よりも2年早かった。ということは、『ラブライブ!』のほうが本作に似ているわけだ。この形式はだいたいどれも同じで、仲間集めの過程でメンバーとなる個人を掘り下げていく。たとえば、陽キャのヤヤがバンド活動で挫折したり、父のなすがままに生きてきたタミが自立したり。さらに、マチが自分を見捨てて出ていった姉(豊口めぐみ)と和解したり、ハナが大会前に帰国して悲しい別れをしたりもする。このように個人を掘り下げることで視聴者を感動させようとするところも『ラブライブ!』的だ。

しかし、本作はこのシリアス要素が鼻について仕方がない。というのも、登場人物に降りかかる危機や葛藤が、どれもクリシェをなぞっているだけなのだ。父親からの自立にせよ、姉との和解にせよ、目新しいところは何もない。むしろ、きららアニメにしては無駄にギスギスしているため、見ていて居心地の悪ささえ感じる。ありきたりなテンプレで「ここは感動するシーンですよ」とやられるのは、温厚な僕でもむかっ腹が立つのだ。これなら後発の『ラブライブ!』のほうがまだマシだった。あちらはまだカタルシスの作り方が上手かったから。本作はクリシェクリシェのまま取り入れてギャーギャー騒いでいるだけだからうんざりする。

ハナの帰国エピソードもどうせ戻ってくるのが分かっていたから必要なかった。最終話における危機の煽り方もわざとらしい。退屈な手続きをこってりした演出で見せられて辟易した。

結局のところ、本作の見どころは「和」を前面に出しているところなのだ。和服や日本家屋にこだわりがあるところが目新しい。これは浜弓場双の作風のようで、『おちこぼれフルーツタルト』【Amazon】でもこの路線を踏襲している。『おちこぼれフルーツタルト』はギャグに振り切ってるぶん、本作よりもなんぼか面白かった。きららアニメの場合、シリアス要素はワンポイントで使ったほうが無難で、それを徹底している『ごちうさ』や『こみっくがーるず』は心に響くような感動を生んでいる。本作はクリシェを多用したことで失敗していた。