海外文学読書録

書評と感想

ジョン・フォード『騎兵隊』(1959/米)

★★★

南北戦争北軍のジョン・マーロー大佐(ジョン・ウェイン)が、南部の奥深くにあるニュートン駅を破壊すべく軍を率いる。隊には軍医のケンドール少佐(ウィリアム・ホールデン)も配属されていた。マーローはケンドールのことを嫌っている。北軍は南部のとある邸宅に滞在、女主人ハンナ(コンスタンス・タワーズ)がマーローたちをもてなす。ところが、ハンナは北軍を憎んでいた。作戦を盗み聞きしたハンナは捕虜のような扱いで一緒に行軍することになる。

マーローとハンナがあんないい雰囲気になっていいのだろうか。一緒に行動しているうちに感情移入したのだろうが、それにしたって2人には利害関係がある。ハンナにとってみれば、もし南軍が戦争に負けたらすべてを失うかもしれない。それでもなお愛情を抱けるのだろうか。結局、紅一点だからロマンスの相手に選ばれたような気がする。対立する2人の雪解け。女がいたら男は告白する義務がある。この部分はいまいち納得できない。

マーローとケンドールは男同士の間合いがあって、当初は対立するものの、最終的にはある程度の歩み寄りができている。マーローはとある事情で医者が嫌いだった。ケンドールのやることなすことすべてが癪に障る。ところが、殴り合いの喧嘩をしたり、ケンドールがマーローの足を治療したりすることで、2人の関係が微妙に変化する。男同士だから別にはしゃいで抱き合ったりはしないのだが、しかし、序盤に比べたらいくぶん雪解けの気配があってラストはさわやかだ。馬に乗って颯爽と立ち去るマーローに対し、患者のため南部に残るケンドール。これはこれで絵になる別れ方である。

マーローはマチズモが強くて現代人からするとなかなかきつい。しかし、死にかけの兵士には父親のような愛情で接しているし、士官学校の生徒たちが敵方として出陣してきたときは見逃している。男性的なやさしさの持ち主なのだ。マーローはハンナに殴られるものの、殴り返したりはしない。彼の辞書に男女平等パンチの文字はないのだろう。マチズモにもいい面があって、それは弱者に対して寛容なところだ。軍隊の制度は古き良き家父長制にまで繋がる。我々はそこに懐かしさを見出すわけで、本作は保守反動な西部劇にあって保守反動な男性像を提示している。

射手が待ち構えている陣地に突撃をかます戦闘は見ていて心臓に悪い。そういう戦闘が2回あった。1回目は南軍が歩兵で北軍を攻めるシーン。こちらは相手が歩兵だったから跳ね返すことができた。2回目は北軍が騎兵で南軍を攻めるシーン。こちらは騎兵だったから跳ね返されず相手の陣地をかき回した。やはり突撃において最も重要なのは機動力なのだろう。こういう無謀な戦闘を見ていると、60万人の死者を出したのも納得である。

それにしても、ジョン・ウェインのケツがでかい。特に酒場で佇むシーンでそのでかさが際立っている。野球選手みたいな体型だった。