海外文学読書録

書評と感想

河村智之『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(2020)

★★

東京・お台場にある虹ヶ咲学園。2年生の高咲侑(矢野妃菜喜)が、優木せつ菜(楠木ともり)のライブを見て感銘を受け、スクールアイドルをサポートしたいと思うようになる。その後、色々あってスクールアイドル同好会に関わるようになり、上原歩夢(大西亜玖璃)、中須かすみ(相良茉優)、桜坂しずく(前田佳織里)、朝香果林(久保田未夢)、宮下愛(村上奈津実)、近江彼方(鬼頭明里)、エマ・ヴェルデ(指出毬亜)、天王寺璃奈(田中ちえ美)らがソロアイドルとして活動する。

全12話。

シリーズ3作目。「主人公がスクールアイドルではない」「部員はソロで活動する」「ラブライブを目指さない」など、外伝的な位置づけになっている。

マンネリを打破しようとした野心的な作品だったけれど、総じてキャラクターに魅力がなくてつまらなかった。キャラが立っていたのは部長のかすみんくらい。しかし、このかすみんにしたって、矢澤にこ黒澤ルビィみたいなあざとさMAXの約束されたポジションなので、通常の部員がこの濃さについてこれないのは残念なところである。見終わった後で印象に残っているのは、お面を被ってライブをするピンク色のキャラくらい。それ以外はモブと大差ない存在感だった(キャラデザもモブっぽい)。エンタメはキャラクターが命なので、この薄さは致命的だろう。10人も雁首揃えて何だったのかと思う。

この手の動物園アニメは途中までキャラクターの紹介になりがちで、本作では9話までがそれに充てられている。スクールアイドルが9人いるから、1話ごとに1人ずつ焦点を当てていくというわけ。これがまた死ぬほど退屈だった。『ラブライブ!』シリーズは立派なお題目に向かって全員がひた走っていく話なので、個人の動機づけはどうしても綺麗事になってしまう。結局はキラキラ輝くことを目指しているのだ。だから誰も彼もテンプレから逸脱することがない。物語というよりは、お決まりの手続きを見せられているような気分になる。

そんななか、主人公の高咲侑はスクールアイドルを目指さないキャラクターで、彼女に焦点を当てた11・12話だけは面白かった。キラキラ輝いている女の子の隣にいるのが侑なのだ。彼女は取り立てて夢もなく、親友の歩夢に自分の夢を託している。歩夢にはステージの上で輝いてもらいたい。それが侑の夢なのだ。ところが、ある出来事がきっかけで侑も自分の夢を見つけることになる。歩夢から精神的に自立することになる。これがなかなか感動的で、思春期における成長とはこういうものかと得心した。

ただ、俯瞰的に見ると、キャラクターの紹介に終始した全9話がどれもつまらなく、「観ていて良かった!」とはならず。仮に2期があったとしても視聴することはないだろう。今思えば、前2作はどちらもクオリティが高かった。