海外文学読書録

書評と感想

境宗久『ゾンビランドサガ』(2018)

★★★★

2008年。女子高生の源さくら(本渡楓)はアイドルに憧れていた。彼女はオーディションの申込書を持って家の外に飛び出すも、軽トラックに撥ねられてしまう。10年後。佐賀県の洋館で目覚めたさくらはゾンビになっていた。彼女は謎のグラサン男・巽孝太郎(宮野真守)に言われるがまま、他の6人のゾンビと共に佐賀を救うご当地アイドルになる。

これは驚天動地・前代未聞のアイドルアニメで面白かった。ゾンビとアイドルというありそうでなかった組み合わせが新鮮。ゾンビものは今まで『がっこうぐらし!』【Amazon】しか観たことがなかったけれど、あちらはあくまで人間が主人公だった。それに対して本作はゾンビが主人公である。しかも、そのゾンビが7人集まってアイドル活動するのだからぶっ飛んでいる。劇中ではゾンビならではのギミックがてんこ盛りで、公衆の面前で首がもげたり、警察官に銃で撃たれたり、お笑い要素がかなり強い。かと思いきや、7話あたりから個人を掘り下げ、泣かせるエピソードをぶち込んでくるのだから油断できない。まさに王道と邪道を巧みに組み合わせた曲者アニメと言えよう。

冷静に考えると、個人エピソードの質なら『ラブライブ!』【Amazon】シリーズのほうが上だけど、本作は邪道から王道へ切り込む意外性があって、たぶんそこが良かったのかもしれない。個人エピソードは基本的にストーリーよりも歌で感動させるスタンスになっていて、その辺の拘りは観ていて感銘を受けた。音楽には人の感情を動かす力がある。ライブシーンで心を揺さぶる姿勢は、アイドルアニメとしては正しい方向性だと言えよう*1

それにしても、佐賀県ってロマンシング・サガとコラボしたり*2、本作みたいなご当地アニメが作られたり、かなりおいしい自治体ではなかろうか。古くはお笑い芸人のはなわが、ギターによる弾き語りで佐賀をアピールしていた。佐賀にいったい何があるというのだろう? 関東に住む僕からすると、九州は福岡が中心で、それ以外は衛星国というイメージがある。佐賀は関東で言えば群馬*3みたいなポジションだろうか。本作にはドライブイン鳥や鹿島ガタリンピックといった実在の事物が出てきて、佐賀を観光しているような気分になる。登場人物も佐賀の方言を喋っていた。こうして振り返ると、本作は色々ありながらもしっかりご当地を紹介している。同じご当地アイドルものということで、『Wake Up, Girls!』【Amazon】が好きな人は本作も観るべきである。

なお、本作はOPが最高なのでYouTubeの動画を貼っておく。

 

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*1:そのライブシーンも、ステージに雷が直撃してメンバーが帯電したり、積雪によって天井が崩落してあわや大惨事になったり、通常のアイドルアニメではあり得ないギミックが盛り込まれている。

*2:ロマンシング佐賀を参照のこと。

*3:お前はまだグンマを知らない』【Amazon】は伝説のクソアニメだった。