海外文学読書録

書評と感想

大島渚『戦場のメリークリスマス』(1983/英=日)

★★★★

1942年。ジャワ島の日本軍俘虜収容所で、朝鮮人軍属が捕虜のオランダ兵を犯す。軍曹のハラ(ビートたけし)は、日本語を話せる捕虜のロレンス英軍中佐(トム・コンティ)に信頼を置いており、彼と事後処理に当たることに。一方、所長のヨノイ大尉(坂本龍一)は、ゲリラ戦を指揮して捕まったセリアズ英軍少佐(デヴィッド・ボウイ)に惹かれ、彼を俘虜長に取り立てようとする。

僕が育ったのは保守的な田舎で、そこは同性愛を忌避するような環境だった。ブラウン管の向こうでは保毛尾田保毛男が跋扈し、学校ではもっぱらそのキモさについて友達と語り合っていた。仲間内ではマチズモが尊重され、なよなよした男はいじめの対象だった。そのせいか、僕は現在に至るまでホモフォビアに取り憑かれている。頭では悪いことだと分かっているのに、感情的な部分で同性愛を忌避している。もちろん、それを表立って主張することはない。お気持ちはお気持ちとして、内に秘めたまま日常生活を送っている。

本作は優れたイースト・ミーツ・ウエストものであり、そこには「愛」の問題も含んでいる。ヨノイがセリアズに対して抱いた愛は同性愛だろう。彼は何とかその感情を振り払おうとするも果たせなかった。一方、セリアズがヨノイに対して示した愛は何だったのか? セリアズは激昂するヨノイの頬にキスすることで、命を落とすはめになった。衆人環視のもと、そこまでのリスクを背負ってあの行為はなされた。結論を言えば、あれは同性愛ではなく、キリスト教の愛(アガペー)なのだろう。ヨノイにとっての愛は武士道における衆道の延長上であり、セリアズにとっての愛はキリスト教アガペーだったのだ。まさにイースト・ミーツ・ウエスト。異なる文化が交差して、せつない光芒を放っている。この部分は僕みたいなホモフォビアでも感銘を受けた。

ハラとロレンスの友情も本作の見どころで、有名なあのセリフ(メリークリスマス、ミスター・ロレンス!)で締めくくられるところはとても印象的だった。この頃のビートたけしは血色が良くてすごく健康そう。滑舌が悪いのが玉に瑕だけど、役者としては独特の存在感があった。その後の映画界における活躍を予感させる。

坂本龍一ビートたけしも、そしてデヴィッド・ボウイもみんな若い。僕は歳食った姿しか知らなかったので新鮮だった。本作は素晴らしい役者が揃った幸福な映画と言えよう。ただ、日本語にも字幕が欲しかったかな。セリフが聞き取りづらかった。