海外文学読書録

書評と感想

2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ジェームズ・ロバートソン『ギデオン・マック牧師の数奇な生涯』(2006)

ギデオン・マック牧師の数奇な生涯 (海外文学セレクション) 作者:ジェームズ・ロバートソン 東京創元社 Amazon ★★★ スコットランドの出版社にギデオン・マック牧師の手記が持ち込まれる。そこには彼の生い立ちのほか、突如森の中に出現した巨大な立石や、洞…

ソール・ベロー『ラヴェルスタイン』(2000)

ラヴェルスタイン 作者:ベロー,ソール 彩流社 Amazon ★★★★ 政治哲学の教授エイヴ・ラヴェルスタインは、著書が世界中でベストセラーになった大金持ちだった。彼はユダヤ人であり、男を愛する自称「性倒錯者」でもある。ラヴェルスタインの友人で作家のチック…

ハ・ジン『待ち暮らし』(1999)

待ち暮らし (ハヤカワ・ノヴェルズ) 作者:ハ ジン 早川書房 Amazon ★★★★ 軍医の孔林は妻の淑玉と離婚すべく、毎年夏に帰省して妻と人民法院に通っていた。ところが、当初は離婚に同意していた妻も土壇場で考えを翻して離婚できない。林は早く妻と別れて看護…

セース・ノーテボーム『儀式』(1980)

儀式 作者:セース・ノーテボーム 論創社 Amazon ★★★★ 舞台はアムステルダム。1963年。30歳のインニ・ウィントロップは、愛する女ジータに逃げられ首吊り自殺を図る。しかし、彼の自殺は未遂に終わるのだった。1953年。インニは叔母の元恋人であるアーノルト…

李永平『吉陵鎮ものがたり』(1986)

吉陵鎮ものがたり (台湾熱帯文学) 作者:李 永平 人文書院 Amazon ★★★ 連作短編集。「万福巷」、「天気雨」、「赤天謡」、「人生風情」、「灯り」、「十一のおっかさん」、「蛇の呪い」、「降りしきる春雨」、「荒城の夜」、「大水」、「思慕」、「地に降りそ…

P・G・ウッドハウス『感謝だ、ジーヴス』(1971)

感謝だ、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション) 作者:P・G・ウッドハウス 発売日: 2011/07/25 メディア: 単行本 ★★★ バーティーの親友ジンジャーがダリア叔母さんの住むマーケット・スノッズベリーで下院補欠選挙に出馬したため、バーティーとジーヴスが彼…

アンジェラ・カーター『新しきイヴの受難』(1977)

新しきイヴの受難 作者:カーター,アンジェラ 国書刊行会 Amazon ★★★★ 就職のためにロンドンからニューヨークに渡ったイヴリンだったが、勤務予定の大学が爆破されたために計画がご破産になる。アメリカは政情が不安定で、市街地でゲリラが銃撃戦を繰り広げて…

ウィリアム・サローヤン『ヒューマン・コメディ』(1943)

ヒューマン・コメディ (光文社古典新訳文庫) 作者:サローヤン 光文社 Amazon ★★★ 第二次大戦下のカリフォルニア州イサカ市。14歳の少年ホーマー・マコーリーが、電報配達の仕事をして大人たちと関わる。マコーリー家では2年前に父親が死に、長男のマーカスが…

フラナリー・オコナー『賢い血』(1952)

賢い血 (ちくま文庫) 作者:フラナリー オコナー 筑摩書房 Amazon ★★★ テネシー州イーストロッド出身のヘイゼル・モーツ(ヘイズ)は、18歳で徴兵されて4年間軍隊にいた。除隊後は汽車に乗って見知らぬ街へ行き、売春宿に入った後に中古車を買う。彼は車のボ…

グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』(2016)

マザリング・サンデー (新潮クレスト・ブックス) 作者:グレアム・スウィフト 新潮社 Amazon ★★★★ 1924年3月30日。母を訪う日曜(マザリング・サンデー)。この日はメイドに許された年に一度の里帰りの日であり、ニヴン家に仕える孤児のジェーンにも暇が出さ…