★★
禁酒法時代のシカゴ。ギャングのアル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)は、酒の密造と密輸で莫大な利益をあげていた。彼は警察や裁判所を買収して権勢を振るっている。そんななか、財務省捜査官のエリオット・ネス(ケビン・コスナー)が、カポネを摘発すべく3人の仲間を集めて立ち向かう。彼らは暴力や買収に屈しない姿勢から、「アンタッチャブル」と呼ばれることになった。
本作は午後のロードショーでポテチをつまみながら見る分には悪くないけれど、腰を据えて真剣に観るのだったらちょっときつい。実話ものという制約のせいか、総じて脚本に魅力がなく、それらしい名場面を繋げて2時間の映画に仕立てたような趣である。オデッサの階段やヒッチコックのオマージュも鼻についた。これはB級畑の監督が無理してA級に挑戦した、そういう文脈で理解すべきなのだろう。『カリートの道』は奇跡的に良かったということが分かった。
ロバート・デ・ニーロは可能な限りアル・カポネに似せた容貌になっていたけれど、やはり見ていてデ・ニーロにしか見えなかったので、実在の有名人を演じるのは大変だと思った。有名人が有名人を演じるという倒錯した状況だったので尚更。その点、4人の捜査官は実在の人物とはいえ、モデルはいずれも無名なので違和感がない。この辺のバランスが実写映画の難しいところで、唯一の解決策はアニメ化しかないだろう。実話ものはすべてアニメでやる。日本のアニメ業界は今後その方面で頑張ってほしい。
老警察官を演じたショーン・コネリーが格好良かった。彼は20年もパトロール業務に甘んじていたとは思えないほどの辣腕家で、エリオットの右腕として大活躍している。人生の先輩として若きエリオットに助言するところも渋くていい。僕もああいう人物と友情を育みたいと思ったほどだ。ただ、死に方には不満があって、あれだけ銃弾を浴びたのに即死しないのはおかしいだろ、とツッコんでしまった。銃撃後、けっこうな距離を這って移動していたし、その後もけっこうな時間を生き延びて遺言を残している。もう少し何とかならなかったか、と残念に思った。
エンニオ・モリコーネの音楽も素晴らしかった。一見してどうってことのないシーンも、彼の音楽が流れることで途端に緊迫感が溢れるようになる。映画は映像さえ良ければそれで十分と思ってたけど、トーキー以降は音楽も同じくらい重要だと実感した。たかが劇伴、されど劇伴。音楽の力は大きい。