海外文学読書録

書評と感想

ハワード・ホークス『赤い河』(1948/米)

★★★★

1951年。幌馬車隊と旅をしていたトーマス・ダンソン(愛称トム、ジョン・ウェイン)が、牧場にうってつけの土地を見つけて隊から離脱する。その後、幌馬車隊はインディアンの襲撃を受けるのだった。やがてトムは、家族をインディアンに殺された少年マシュウ・ガース(愛称マット)と出会い、彼を養子にする。14年後、南北戦争から帰ってきたマット(モンゴメリー・クリフト)は、銃の腕前をあげて頼れる青年になっていた。トムとマットは、テキサス州からミズーリ州へ1万頭の牛を運ぶロングドライブを敢行する。

画面を覆う牛の群れが壮観だった。『ローハイド』【Amazon】を2時間に凝縮した映画というか、むしろ『ローハイド』が本作をテレビシリーズとして引き伸ばしたというか。いずれにせよ、圧倒的なスペクタルを堪能した。

ある男がうっかり物音を立てたせいで、たくさんの牛が逃げ回る。その迫力たるや、筆舌に尽くしがたいほどだった。とにかくもの凄い勢いで牛たちが走っている。このシーンはいったいどうやって撮ったのだろう? まず牛を走らせるのが大変だし、カメラで撮影するのも危険を伴う。何より、これだけ無軌道に走らせておいて、撮影後はどう収拾をつけたのか? 怪我人が出ても不思議じゃないくらいで、その圧倒的な映像に見入ってしまった。このシーンは監督の裏話が聞きたいところだ。

もちろん、こういう派手なシーンだけでなく、たとえば牛の群れが河を渡るだとか、町中をのそのそ練り歩くだとか、普通に移動しているだけでも絵になっている。本作は昔の映画だけあって、たまにチープな合成映像が入るのだけど、こと牛に関しては妥協してないように見える。

ジョン・ウェインが嫌な奴を演じているのが面白い。彼は酒浸りで横暴で、同行しているカウボーイたちから不満が上がっている。常に命令口調だし、不祥事を起こした人物をムチ打ちにしようとしたり、あるいは縛り首にしようとしたり、私刑を行うことも厭わない。そして、遂には義理の息子マットを中心に全員が離反するのだった。1万頭の牛もマットたちに取られてしまう……。まさかジョン・ウェインがこういう役を演じるとは思わなかったので、本作はなかなか新鮮だった。

手下に裏切られたトムが、見えない恐怖と化しているところもいい。いつ一行に追いついて復讐を果たすのか。カウボーイたちはそれを心配している。最後はどうなることかと気を揉んでいたら、これがまた西部の男らしい荒っぽい和解で事が済んでいた。さすがに主演のジョン・ウェインに悪役はやらせられないもんなあ。これはこれで後味が良かった。

マット役のモンゴメリー・クリフトは、本作によって人気が出たという。確かにジョン・ウェインを押しのけておいしいところを持っていった。さらに、ジョン・ウェインも、本作のヒットによってスターの地位を確立したという。なるほど、本作は2人にとって記念碑的作品になるようだ。