海外文学読書録

書評と感想

松田清『とんでもスキルで異世界放浪メシ』(2023)

★★

平凡なサラリーマンのムコーダ(内田雄馬)が異世界に召喚される。彼に与えられた固有スキルは「ネットスーパー」だった。このスキルによって日本のネットスーパーから商品を購入することができる。ムコーダは自分が作った料理で伝説の魔獣フェンリルの胃袋を掴んで従魔にする。フェンリルをフェル(日野聡)と名付けた。その後、特殊個体のスライム・スイ(木野日菜)も従魔にする。

原作は江口連の同名小説【Amazon】。

全12話。

作画は奇麗で良かったけど、なろう系らしい「ニッポンすごい!」がしんどかった。現代人ってそんなに自信がないのだろうか。こういうのは生理的に受け付けない。

異世界ものの醍醐味は、日本の文化を異世界に持ち込み、異世界人からすごいすごい言われるところである。日本のテレビ業界では一時期、外国人に日本文化を褒めさせる番組が流行った(今も流行ってるかも?)。異世界ものは外国人を異世界人に置き換えて褒めさせている。日本の食材がとても美味い。ニッポンすごい! 日本のシャンプーで髪の毛がきめ細かくなった。ニッポンすごい! 万事がこの調子である。

ムコーダの固有スキル「ネットスーパー」は、異世界でありながら日本の商品を手に入れられるチートスキルだ。遅れた異世界に日本の進んだ文化をやすやすと持ち込むことができる。日本の牛肉は美味い。日本の調味料は異世界の食材にも合う。日本の菓子パンだって従魔にとってはお気に入りだ。異世界人はとにかく日本の食材だったら何でも美味そうに食べる。そこが我々の優越感をくすぐるのだ。あたかも日本食を食べに来日した外国人を見ているかのように。異世界の文明レベルが軒並み中世に留まっているのは、そこでこそ日本の先進性が生きるからだろう。この発想は発展途上国で先進国が無双してる感じがしてどうにも居心地が悪い。

異世界ものにしては気持ち良くなる経路が複雑になっている。「俺TUEEE」も「またオレ何かやっちゃいました?」も従魔経由で行われるのだ。ムコーダ本人はただ料理が得意な一般人に過ぎない。しかし、従魔は2匹とも最強クラスである。その最強クラスの従魔が無双する。異世界のモブどもが驚く。ムコーダが「またオレ何かやっちゃいました?」とアセアセする。結局、従魔を従えているムコーダ、ひいては彼の依拠する日本文化が最強なのだ。自分自身は強くなくていい。強い奴の忠誠心さえ得られれば無双することができる。そういう意味でこの間接的な「俺TUEEE」はよくできている。

当初は実在の商品や調味料が登場するところに新鮮味があったが、それも中盤ではどうでもよくなってしまった。とはいえ、作画は素晴らしい。途中で切らずに最後まで見たのは作画目当てだった。料理がメインのアニメではあるが、意外と戦闘シーンも見応えのあるものになっている。MAPPAはいい仕事をしたのではないか。