海外文学読書録

書評と感想

『ブラザーズ・クエイ短編集Ⅰ』(1979/英,1984/英,1985/英)

★★★★

短編集。「人工の夜景」、「ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋」、「ギルガメッシュ叙事詩を大幅に偽装して縮小した、フナー・ラウスの局長のちょっとした歌、またはこの名付け難い小さなほうき」の3編。

ストップモーションアニメ。ブラザーズ・クエイとはスティーブン・クエイとティモシー・クエイのことで、2人は一卵性双生児らしい。美術が独特で癖になる。

以下、各短編について。

「人工の夜景」。孤独で人を不安にさせるような雰囲気だが、美術の造形が独特で見入ってしまう。人形の顔が不気味なのはわざとだろうか。しかも、振り向くとき首しか動かないから不気味さに拍車がかかっている。本作が面白いのは、路面電車という直線的な存在を持ってきたところだろう。電車の動き、風景の移ろい。そういったものを様々なアングルで見せてくれる。

ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋」。「人工の夜景」と比べるとだいぶ茶目っ気がある。どうやら本で構成された人形がヤン・シュヴァンクマイエルのようだ。頭がボサボサなところがマッドドクターみたいでイカしている。そして、彼の元にやってきたのがつぶらな瞳をした子供だ。この子はキューピーちゃんみたいな造形で、頭パッカーンしたまま動き回るのが笑える。他にもピンがちょこまかするところは小人みたいでユーモラスだ。

ギルガメッシュ叙事詩を大幅に偽装して縮小した、フナー・ラウスの局長のちょっとした歌、またはこの名付け難い小さなほうき」。平らな顔をした人形と鳥みたいな人形、どちらも造形が派手だった。『ギルガメシュ叙事詩』との関係はよく分からない。平らな顔をした人形がギルガメッシュで、鳥みたいな人形がエンキドゥなのだろうか。本作は暴力的な描写があって驚いた。

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