海外文学読書録

書評と感想

リチャード・レスター『スーパーマンⅡ 冒険編』(1980/米=英)

★★★

エッフェル塔をテロリストが占拠した。現地では記者のロイス・レーンマーゴット・キダー)が取材をしている。それを知ったスーパーマンクリストファー・リーヴ)がニューヨークから急行して事件を解決する。その際、テロリストが持っていた水爆を宇宙へ持っていって爆発させた。ところが、そのせいで惑星クリプトンを追放されたゾッド将軍(テレンス・スタンプ)たちが復活してしまう。一方、刑務所では服役中のレックス・ルーサージーン・ハックマン)が脱獄し……。

『スーパーマン』の続編。

映像は今見るとチープだけど、脚本はまあまあだった。脚本には前作に続いてマリオ・プーゾが参加している。

冒頭にヒロインの危機を持ってきてスーパーマンの活躍を見せるのは掴みとして最高だし、その事件のせいで強敵が復活する流れもよく出来ている。スーパーマンの正体がバレるところも練られていて、ヒロインが試し行為で川に身投げしたときはバレなかったのに、その後ホテルの部屋であっさりバレてしまうのがイカしていた。労力と結果が釣り合っていないのが皮肉である。他にもレックス・ルーサーの使い方が巧妙で、彼はスーパーマンとゾッド将軍を結びつけるだけでなく、終盤における逆転劇のキーパーソンになっている。途中まではコメディリリーフといった感じで再登場に懐疑的だったものの、終わってみれば脱獄させたのは正解だったと納得した。

スーパーマンは地球人として生きるために特殊な装置を使って超能力を失う。一般人になった彼はレッドネックとの喧嘩にも勝てない。殴られて血を流している。しかし、ゾッド将軍たちがホワイトハウスを占拠して宣戦布告してきたため、スーパーマンは超能力を取り戻すことになった。ここからどうするのだろう? と思っていたら、北極のアジトでアイテムを拾って普通に復活していたので拍子抜けした。そう簡単に超能力を取り戻していいのだろうか。もう少し困難な試練が必要だったのではなかろうか。そりゃ一般人が歩いて北極を渡るのは試練ではあるけど、別に苦労した様子もないし……。ともあれ、疑問に対して期待していたほどの回答がなくて不満だった。

意外にもゾッド将軍たちは無駄な殺生をしていない。明確に人を殺したのは月面で宇宙飛行士の宇宙服を破ったところくらい。地球に襲来してからは人を殺すシーンがなかった。また、シリアスな悪党と思わせてコメディをやらせているところも意外だ。ヒューストンではカルチャーギャップを利用した茶番を演じているし、スーパーマンとの対決ももっさりしていてどこか間が抜けている。『マン・オブ・スティール』では死人が出るのもお構いなしにバトルをしていた。一方、本作では死人が出ないように気を配っている。人の生死において両者は対照関係にあるのだった。

映像はどうやって撮ったのか分からないシーンが散見される。たとえば、月面における重力の表現。地球人が重力の影響を受けてふわふわ浮かんでいるのに対し、クリプトン星人は地に足を着けて比較的自由に動いている。それを同じフレームで表現できているところが不思議だった。そしてもうひとつ、ナイアガラの滝で子供が手すりを越えて危険行為をしているシーン。背景の瀑布が合成に見えなかったので本当に危険そうだった。

ニューヨーク市街でのバトルでは、ゾッド将軍が巻き起こした風に多数の市民が翻弄されている。みんな迫真の演技で撮影現場を想像すると可笑しかった。それと、ゾッド将軍が目から発した熱線、それが鏡で反射するのはギャグにしか見えなかった。