海外文学読書録

書評と感想

村瀬修功『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021/日)

★★★

U.C.0105。第二次ネオ・ジオン戦争から12年経っていたが、世間では未だにシャアの影響が残っていた。地球ではマフティー率いる武装組織が、シャアの理想を掲げてテロを行っている。そんななか、ブライト・ノアの息子ハサウェイ・ノア小野賢章)が、連邦軍大佐ケネス・スレッグ(諏訪部順一)や謎の少女ギギ・アンダルシア(上田麗奈)と知り合う。

原作は富野由悠季の同名小説【Amazon】。

作画は良かったけれど、三部作の一作目だけあって内容としては物足りなかった。こういう続きものは全部観てから感想を述べるべきなのだろう。ただ、現時点では全部観るかどうか未定なので、とりあえず今のうちに感想を書いておくことにした。

逆襲のシャア』【Amazon】ではクソガキだったハサウェイが、本作ではデキる男オーラを出していて驚いた。25歳だからそれなりに成長したということだろう。第二次ネオ・ジオン戦争で機体を無断で持ち出したことは戦勝によって不問に付されたようである。その一方、クェス・パラヤを死なせたことは未だに引っ掛かっているようで、出会ったばかりのギギにクェスの面影を見ている。僕からしたら、「クェスのことよりチェーンのことを後悔しろよ」と思うのだが、ハサウェイの頭にはクェスのことしかなかった。この辺、デキる男オーラを出しているわりに根深い歪みを感じる。

ギギ・アンダルシアはファム・ファタールとして造形されており、ハサウエイとケネスを結ぶ三角関係の鎹になっている。勘の鋭いところが特徴の不思議ちゃんだ。原作者の富野由悠季は物語を転がす際、よくメンヘラ女を利用するけれど、今回はギギがその役割を担っているのだろう。ただ、現時点では思ったほどメンヘラ臭がしない。『Zガンダム』【Amazon】の女性陣や『逆襲のシャア』のクェスのような激情がないのだ。今のところは自覚のないファム・ファタールといった人物像である。今後、彼女がどのように覚醒するのかが楽しみだ。

戦闘シーンは昔の作品に比べると随分進化している。コクピットの映像は実際の兵器を扱っているような質感があるし、MS同士の戦いが捉えどころのないように描かれているのは、戦闘機のような実在する兵器を踏まえているように思われる。だいたいMSのように高度に発達した兵器だと、そのスピードに人間の目はついていけないはずなのだ。リアリティを追求しているところは素直に感心するけれど、その反面、観客からしたら何が起こっているのか分かりづらいため、エンターテイメントとしてはいささか親切さに欠ける。リアリティを取るか、娯楽性を取るか。本作はそんな二者択一から前者を選び取っている。

本作でニュータイプ論を捨て去ったのは潔い。というのも、劇中でハサウェイが「ニュータイプはいない」と断言しているのだ。もしかしたら続編で復活するかもしれないけれど、現時点では決別しているようなのでこのまま頑張ってもらいたい。