海外文学読書録

書評と感想

徳本善信『こみっくがーるず』(2018)

★★★★

女子高生の萌田薫子(赤尾ひかる)は、「かおす」というペンネームで雑誌に4コマ漫画を掲載していた。ところが、読者アンケートで最下位をとってしまう。かおすは編集者(津田美波)の勧めで漫画家専用の女子寮に入る。そこには少女漫画家の恋塚小夢(本渡楓)、ティーンズラブ漫画家の色川琉姫(大西沙織)、少年漫画家の勝木翼(高橋李依)がいた。メンバーはみな女子高生で同じ高校に通う。

原作ははんざわかおりの同名漫画【Amazon】。

これは面白かった。視聴者にまったく負荷をかけないタイプのギャグアニメで、とにかく矢継ぎ早にネタを繰り出していく。可愛い女の子たちがひたすらキャッキャウフフしていて、きらら漫画の正しい映像化という感じだった。シリーズ構成の高橋ナツコは原作クラッシャーとして悪名が高いけれど、本作に限っては最高の仕事をしたと思う。全体的にテンポが良く、頭を空っぽにして楽しめるところがいい。今のところ、きららアニメの中だったら『ごちうさ』の次に好きかもしれない。

同じ漫画家でもそれぞれ描いてるジャンルが違っていて、漫画家たちのキャラも違っている。かおすは女子小学生みたいな外見なのに中身はおっさんで、独特のズレたセンスが視聴者に親しみを感じさせる。翼は少年漫画家だけあってボーイッシュで、漫画の中の登場人物のような天然ぶりを発揮していた。少女漫画家の小夢は翼に惚れており、ティーンズラブ漫画家の琉姫はエロい妄想をしている。このアニメ、かおす単体ではパッとしないものの、4人が集まることで化学反応を起こし、賑やかな笑いに包まれるのだから素晴らしい。日常アニメとはつくづく人間関係のアニメだと思う。

本作にはシリアス要素も入っていて、それが彼女たちの青春を引き立てている。ギャグアニメがシリアスをやると『銀魂』【Amazon】みたいに説教臭くなるものだけど、本作にはそういった夾雑物がないから安心だ。嫌味や臭味がまったくなく、終盤はかおすの成長物語として手堅くまとまっている。シリーズ構成の高橋ナツコは最高の仕事をしたのではなかろうか。普段はギャグで笑わせつつ、ここぞというときにシリアスを入れて青春の一コマを演出する。かおすが漫画家として一皮むけるところを描く。ワンクールアニメでこんなに後味がいいのも久しぶりだった。

準レギュラーにホラー漫画家の怖浦すず(上田麗奈)がいる。彼女はお化けみたいな出オチ要員で完全に浮いていた。一回だけならまだしも、ちょくちょく出てくるのはどうかと思う。レギュラー陣とは明らかに相性がよくなかった。